復刻版日記⑰ジャムセッションの心地よい緊張感2010年02月05日

 (2005年11月18日の日記より)
 異業種交流会の今月の例会は、久々の「ジャズ・ナイトの集い」だった。演奏が始まった。ピアノ、ベース、ドラムスのトリオによるセッションだ。20代後半にみえる若いドラマーは、ときおり笑顔を見せながら自ら演奏を楽しんでいるかのようにスティックを躍らせている。40歳前後と思しきベースマンは、はにかんだような表情を漂わせてひたむきに両手の指先を酷使している。トレードマークらしき野球帽をかぶったマスターがピアノに向っている。先ほどの温和なオヤジさんの顔は、厳しさに満ちたピアニストの顔に一変し、頑なにピアノと闘っているかに見える。20代から60代までの世代を超えたメンバーを率いて演奏を仕切っているのはやはりこのオヤジさんなのだ。3人3様の個性にあふれた演奏スタイルが私たちを楽しませる。
 数曲の演奏の後、女性ヴォーカルが加わる。抑えたトーンの軽妙で洒脱なト-クが、巧みに聴衆をライブに引き込みながら、スッとジャズヴォーカルの世界に連れ出してくれる。
 ピアノが淡々と語りかけ、ベースがこれに応じて囁き返す。ドラムスがアップテンポなリズムを刻んで割って入る。手の内を知り合った者どうしのその時々に繰り出されるアドリブが緊張感をかもしている。ベースソロが始まり、ヴォーカルとピアノとドラムスは、沈黙の世界に身を引き、ベースの調べを見守っている。抑えたバリトンの調べが、淡々と・・・時に激しく聴衆に語りかける。ソロがエンディングを迎えた。固唾を呑んだ緊張感から解き放たれた聴衆は、すかさず拍手でこれに応じる。ライブハウスに居合わせたプレーヤーと聴衆が見事に一体化した瞬間だった。
 気心を知り合った仲間たちの楽しいセッションだった。何よりもプレーヤーたちが演奏を楽しんでいる。ジャズの世界に浸っている。そして私たちは、メンバーたちのボケと突っ込み似も似た巧みな掛け合いを楽しんでいた。ジャムセッションのもたらす心地よい緊張感を味わいながら・・・。

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