復刻版日記23「42km・・・女の闘い」2010年06月29日

(1998年11月15日の日記より)
 東京国際女子マラソン・・・見応えのある2時間30分のドラマだった。ドイツの実力派カトリン・ドーレ、エチオピアの五輪メダリスト・ロバらの有力外国勢。対する日本勢は実力派の浅利、新鋭の市橋、宮崎が挑む。役者の顔ぶれに文句はない。
 前半は、先の外国勢2人を含む7人の先頭集団が引っ張る。28km付近から日本勢3人が飛び出す。浅利、市橋の先輩二人の火花を散らす併走のすぐ後ろを初マラソンの宮崎がつけるという展開。38km付近で宮崎が脱落。前を行く市橋。浅利の後ろにつきたい気持が時にジグザグ走行となる。ハタチの年齢に似合わない駆け引きともみえる。二人の並走が続く。仮面ライダー風のサングラスに隠された浅利の無表情さときかんきの強い餓鬼大将を連想させる市橋の整ったアップが好対象だ。
 国立競技場トラックに踏み込んだ途端、浅利はサングラスを投げ捨てた。仮面ライダーから驚くほどかわいいアップに変身(日本の女子マラソンランナーたちはいつのまにこんなに美しくなったのか)。同時に一気に前に出る浅利。その後をピッタリ市橋がついている。第4コーナーから直線コースに。満を持していたかのように市橋が勝負に出る。体ひとつ前に出た。誰もが市橋の20才の若さが29才の浅利の疲れを制したと思ったに違いない。ドラマの劇的な幕切れはゴール直前に訪れた。浅利の粘りが体半分、先にテープを切った。市橋の最後の勝負を見越したかのような浅利の余力の温存だったのか。二人のタイムは2時間28分29秒。同タイムだった。浅利の満面の笑みと悔しさを滲ませる市橋の表情が明暗を分ける。
 マラソン中継に夢中になりだしたのはいつの頃からだったのか。テニスに明け暮れていた大学生だった頃の息子は「あんな変化のない単調なスポーツのどこが面白いのかわからない」と言っていた。言われてみればその通りだ。それでもヤッパリわくわくさせるものがマラソンにはある。タンタンとしてそれでいて起伏のある、どこか人生にも似たこのスポーツを味わうには、振り替えられる人生の一定以上の歩みが必要なのだろうか。

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