山本兼一著「利休にたずねよ」2010年11月26日

 スペイン旅行に持参した二冊目の文庫本は、直前に購入した山本兼一の歴史小説「利休にたずねよ」だった。昨年の直木賞受賞作である。
 利休についての知識は乏しかった。茶道の宗匠にして秀吉に重用され栄達を遂げた人。大徳寺山門に利休像が祀られたことが秀吉の勘気に触れ切腹を命ぜられた。といった程度だった。この時代の歴史小説にしばしば登場する人物でありながら真正面から取り上げた作品を読んだ記憶がない。謎の多い人物である。最大の謎は秀吉の寵愛が死を命じるまでの確執に至った真相は何かという点だろう。
 この作品は利休の秀吉との確執を真正面から取上げ、二つの独特の手法でその真相を描いている。ひとつは利休本人を含め、秀吉をはじめとして利休と関わった多くの歴史上の人物たちの「語り」を通して利休の心情や行動を解き明かす手法である。ひとりの人物を多角的に見つめ表現することで真実に迫るこの手法は説得力があり納得できるものだった。いまひとつは、利休の切腹の日を幕開けとして時間軸を逆転させながら利休の生涯を描く手法である。これはかなり大胆な実験的手法だけに読み進む上での違和感と興趣の低下は免れない。
 結論的にいえば秀吉との確執の最大のものは美意識の違いであり、茶の湯の美意識にまで土足で踏み込む秀吉に対する利休の美意識の矜持が切腹をも辞さない覚悟に突き進んだということか。久々に骨太で新鮮な歴史小説に出合った感がある。

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_ 国内航空券【チケットカフェ】社長のあれこれ - 2010/12/22 03:46

豊臣秀吉に茶頭として寵愛を受けながら、秀吉の命により切腹死した茶人、千利休。
切腹を命じられるに至った経緯は諸説あり、本書では興味深い新たな説が!
そしてその天才的審美眼はどのように培われたのか?
茶人、千利休を題材にした、歴史小説。

正直に言うと名前も存じ