和解協議での二つの貴重な事例2010年12月10日

 労働委員会のある事件の4回目の調査の日だった。前回調査で委員会から労使の自主交渉を促し双方の同意を得られていた。今日はその結果を踏まえた調査の日だった。委員控室で自主交渉による和解が成立し合意書も提出されているいることを事務局から告げられた。
 会議冒頭に公益委員より「調査を和解協議に切り替える」旨宣告された。その上で合意書を前提に労働委員会としての和解協定書案が提示され当事者双方の意向が打診された。すかさず会社側代理人の弁護士から「協定案文に会社の不当労働行為がなかった」という文言の追記を要請された。それに対し組合側も異議はない旨の意向が表明され要請は受け入れられる方向に傾いた。とっさに異議を差し挟んだ。和解協定は労働委員会委員も署名捺印する。その文面に「会社の不当労働行為がなかった」旨を挿入することは労働委員会自身がその旨の判断を下したことになる。「調査を和解協議に切り替えた時点で、労働委員会は本件での不当労働行為の有無の判断を棚上げしたことになる。不当労働行為の有無判断を下していないにもかかわらずそうした文面を記載することはできない」という主張を述べた。会社側弁護士も即座に了解した。とっさのことながら3年半の労働者委員としての経験が労働委員会としてのあるべき判断を促してくれたと思った。協議終了後の事務局を交えた委員懇談の場でも私の発言への賛辞を頂いた。 
 この和解協議ではもうひとつの特筆すべき出来事があった。申立人の合同労組幹部役員が和解協定書への関係者の捺印が終了した時点で異例の発言を求めた。会社側代理人である弁護士への感謝の言葉だった。「精神的疾患を患った組合員の雇用が継続されたことで本人と家族が路頭に迷うという事態が回避できた。ひとえに代理人の誠実な対応の賜物と感謝したい」。それは同席した関係者一同にとっても感銘深い発言だった。本件に関与した者全員の達成感を感じさせずにはおかない発言だった。同時にともすれば金銭和解になりがちな合同労組の取組み姿勢にあって、事例によっては雇用そのものを確保するという姿勢もがあることを告げていた。
 二つの貴重な事例を学んだ今日の和解協議だった。