有川浩著「阪急電車」2011年03月01日

 有川浩著「阪急電車」を二日間で一気に読んだ。おそらく若い世代から圧倒的な支持を得た作品なんだろうと思った。阪急今津線というマイナーなローカル路線の宝塚と西宮北口間の8駅を舞台としたオムニバス風の物語である。8駅の往復を16の短編で紡いでいる。沿線にある多くの大学や高校の通学経験者にはたまらない郷愁を覚えるにちがいない。
 作者の有川浩氏の初めて読む作品であり、その名前から男性作家と信じて疑わなかった。読み進むうちに違和感を覚えた。どう考えても語り口や感性は若い女性のものだ。読了後にネットで調べて納得した。アラフォー世代の女性だった。名前の「浩」の読みは「ヒロ」だったのだ。それにしてもこの世代の女性の感性(と思われる)を見事に表現している。会話体の軽妙な文体は、アラ還越え世代のオヤジをも苦もなく取り込んでしまう。
 宝塚発の二駅目・宝塚南口駅の「寝取られ女」物語に仰天させられた。私などには思いもよらない衝撃的な「話し」をこともなげに突きつける。それでいてなるほどと唸らされる物語である。この作品を一気に読ませてしまうトリガーだった。6駅目・甲東園駅の「アホ彼氏」物語にも思い切り笑わせられた。笑わせながらもほのぼのとしたまっとうなテーマをキッチリ抑えている。
 こうした6つの話しが西宮北口までの各駅で展開される。作品後半は同じ路線の折り返しの風景である。行きの物語の半年後のオチが繰り広げられる。あの登場人物たちはその後どうなったのだろうという読者の興味を拾ってくれる大した企画構成力である。
 ローカル路線の車内でのほのぼのとした日常を巧みに掬い取っている。作者はそれぞれの物語のチョッとした素材を車内で垣間見たに違いない。それを物語の素材として掴み取る感性と肉付けして物語に仕立てられる力量こそが作家の凄味である。パターン化した自分の読書傾向の枠外の作家の優れた作品を読んだ。

コメント

_ hirugao ― 2011/03/09 09:43

おはようございます
有川浩のこの小説読みました。
最近阪急電車に乗ることが多いのでこの小説にもとづいた写真を撮りたいと思っています。
ところでこのあたりで菜の花の沢山咲いているところごぞんじですか。

_ 明日香 亮 ― 2011/03/10 08:18

hirugaoさん、お久しぶりです。「阪急電車」は面白かったですか。写真撮影には「阪急電車」の公式サイトやサイト掲載の「メイキング日記」(作者は、知人の西宮流の記者さんです)が参考になるかもしれませんね。
山口周辺では私の知る限り、菜の花の咲いているところに心当たりはありません。
4月9日には「さくらまつり」がありますね。

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_ ご本といえばblog - 2011/09/05 07:38

有川浩著 「阪急電車」を読む。
このフレーズにシビれた。
不定期に遭遇すると分かっているのは自分だけだと思っていた。
いつ。どこで。
自分が逆にロックオンされたきっかけは ...