遠山美都男著「大化改新」(その1:首謀者は誰か)2011年09月13日

 一週間前に地元の公民館講座「山口町の歴史(古代編)」を受講した。その中で「大化改新の首謀者は孝徳天皇だった」という説が紹介され、その出典である歴史学者・遠山美都男氏著作の「大化改新--六四五年の宮廷革命--」も紹介された。
 かねてからその説を詳しく知りたいと思っていたので、その日のうちにネット検索し古本の在庫を見つけてすぐにオーダーした。三日前に入手した新書版で300頁に及ぶその著書に目を通した。序章と結章を除いて「国家形成と王権継承」「王権と藤原氏の歴史」「検証・乙巳の変--人間関係--」「検証・乙巳の変--発生と展開--」の四章で構成されている。
 昨日までに序章とⅠ章を一気に読んだ。学術書ながら読みやすくて面白い著作だった。塩野七生さんの「ローマ人の物語」の作風にも似た趣きがある。できれば各章ごとに感想をこのブログに綴っておきたいと思った。それほどに興味深く、魅力的な著作である。
 「序章 六四五年六月十二日」では「乙巳の変」とよばれる「蘇我蝦夷・入鹿殺害のクーデター」の顛末をその出典である『日本書紀』をもとに物語風に忠実に再現する。一方で序章の結びでは、書紀の記述が中大兄皇子と中臣鎌足という事件の一方の当事者たちの主張であり、それは二つの点で再検証が必要であると疑問を呈する。一つは「中大兄が事件前後において(略)有力な王権継承予定者だった」という点であり、今ひとつは「中大兄と鎌足の強固な主従関係が(事件前の)早い段階から存在し、これが、クーデターとその後の政局の一貫した中核であり続けた」という点である。この二点を検証するために以下の四つの章の構成が語られる。
 古代史最大の謎のひとつである「乙巳の変」を巡る壮大なドラマが幕を開けた。