団塊おじさんたちが地域に戻る2012年10月29日

 この時期恒例の民生委員としての高齢者訪問がようやく終った。9月中旬から始めてひと月半をかけて65歳以上の高齢者のいる163軒のお宅を訪ねた。今年の訪問で気になった点がある。いよいよ団塊世代のおじさんたちの高齢化が始まり、彼らが地域に戻ってきたことだ。
 担当地区で新たに65歳の対象者となった人が昨年の12人から今年は一気に26人に増えた。昭和22年生まれの団塊世代第1陣である。その内16人の男性の殆どがリタイヤされている。一般的に企業の嘱託等での再雇用も65歳が限度であることからすれば当然だろう。来年以降3年ばかりは続々とリタイヤおじさんが地域に戻ってくる。
 問題は、リタイヤしたおじさん達の地域での居場所である。仕事人間で過ごしてきた彼らに地域の人脈は殆どない。新興住宅街の男連中の横のつながりは極めてか細い。趣味や特技も通常それほど豊かでなく、あってもそれを活かす機会が少ない。勢い、リタイヤ後は家の中に引籠る場面が多くなる。
 これに比べて主婦たちの繋がりは強力である。子供のPTAの付き合いに始まり、自治会関係や地域ボランティアの付き合い、趣味やカルチャー仲間、パート仲間などと驚くほど太く、多彩である。相互に訪問し合ってお茶することが無上の楽しみとなっていたりする。ところが主婦にとってのこの我が世の春が、旦那のリタイヤで一変する。ある日突然、嵩高い亭主が日がな一日テレビの前に鎮座するのである。なによりも友人たちを招いてお茶する楽しみが断たれてしまう。お買物などの気ままな外出にも気を遣い、亭主の昼食の手当ても煩わしい。溜まる一方のストレスが精神の安定を欠くことすらあるという。
 今回の高齢者訪問では、一方でリタイヤおじさんと愚痴りあい、他方でリタイヤおじさんを迎えた主婦たちの愚痴を聞いた。双方の認識のズレは予想以上に大きい。解決方法は亭主たちが家を出る機会を増やすことしかない。それにはおじさんたちが横に繋がり、交流し合って地域で居場所をみつけることだと悟った。
 農村共同体の風土が色濃く残る旧山口地区では、男たちを中心として町内会だけでなく農会や神社やお寺の行事などが定期的に開催され、そのつど一杯やる機会も多い。そんな風土が主婦たちを救い、家庭をハッピーにしている面があるといえよう。
 新興住宅街は、地域のボランティアさえも主婦たちが中心である。団塊おじさんたちが地域に戻ってきても、そうした活動に参加するきっかけもルートもない。民生委員は高齢者ケアが主な役割である。とすればこうした問題に対応するのも役割のひとつかと思ったりする。