NHKスペシャル「老人漂流社会」2013年01月21日

 昨晩9時放映の「NHKスペシャル・老人漂流社会」を家内と一緒に観た。衝撃的で考えさせられる番組だった。かっての「豊かな社会・日本」が幻想となっいる現実をまざまざと映しだしていた。「超高齢化社会」「格差社会」「貧困ビジネス」「福祉切捨て」「無縁社会」といった今を表現するキーワードが凝縮した日本の姿がそこにあった。
 「おばあちゃんはひとつの病院では長く入院できないんです。期限を超えると否応なく他の病院に移らされるんです」。民生委員として訪問した先で、認知症で入退院を繰り返す高齢者の家族からよく聞かされる話である。「たらいまわし」という言葉が浮かんだ。どこかおかしい。どうやら長期入院患者の診療報酬を減額するという国の医療政策にその原因があるようだ。
 番組が突きつけた現実は、そうした認知症高齢者だけの問題ではない。もっと身近で深刻な現実だった。今やひとり暮らしのお年寄りは500万人を超えた。配偶者が施設に入居した。配偶者に先立たれた。身の回りの世話をする家族もいない。仕事の都合や経済的事情で子どもたちとの同居も難しい。高齢者のひとり暮らしの事情は様々で身近である。そんなひとり暮らしも元気な間は何とか暮らせる。ところが病気等で日常生活が自力でできなくなると介護が必要になる。国は自宅介護を推進し、診療報酬制度をテコに病院のベッドを減らしてきた。にもかかわらず病院を追いだされても入居できる介護施設は圧倒的に不足している。ショートステイを繰り返して居場所を確保するしかない。漂流が始まる。
 番組の終盤で、ひとつの家に高齢者が集まって暮らす共同住宅の事例が紹介された。ここでは入居しているお年寄りたちがそれぞれの持ち味を活かして、できる範囲で支え合う。そんな支え合いの暮らしの中でこれまで13人がここで看取られた。厳しい現実を思い知らされた番組が用意したささやかな救いだった。
 観終えて、「明日は我が身かもしれんな~」と家内に呟いた。そうならないための健康面や経済面の自助努力は否定しない。同時に超高齢化社会を迎えての国の施策の貧困を憂いた。財政危機を名分に安易な福祉切り捨てが罷り通る。病院から介護の場を奪い、不足する介護施設を支えるヘルパー等のマンパワーは過酷な労働環境でますます疲弊する。老人漂流社会とは、最低限の「人間の尊厳」すら守れない社会といううしかない。

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