労働委員会労働者委員の仕事2013年03月22日

 労働委員会の労働者委員に就任して5年が経過した。果たすべき役割はそれなりに理解し、自分なりにこなしているとは思う。とはいえ、基本的に各委員は独立した事業者のような立場である。誰からもその仕事ぶりをチェックされないし評価も下されない。時として果たしてこんな仕事ぶりでいいのかと不安になることもある。
 そうした中で、調整事件の斡旋作業や審査事件の関与和解では、和解合意に向けた働きかけを通して自分の仕事ぶりを実感できる。それだけにやりがいもあり力も入るし、合意に至れば達成感もひとしおである。
 自分の役割に一種のもどかしさを覚えるのは、審査事件で和解が叶わず命令交付にまで至る場合である。この場合は、公益委員や事務局中心の流れとなる。持ち込まれた事件が、命令交付という形で不当労働行為に該当するか否かの法的な判断が中心になるからだ。法律の専門家である公益委員や提出資料を詳細に読みこんでいる事務局に最終判断を委ねることになる。
 その場合でも労働者委員や使用者委員は公益委員にその事件についての「意見書」を提出することができる。実際これまでもほとんどの命令交付に至った事件について意見書を提出してきた。問題はどのような立場で意見を述べるかという点だ。いうまでもなく労働委員会の命令は裁判所の判決のように法的解釈一辺倒であってはならない。現実の生きた労働現場の実態に照らして労使関係の在るべき姿を念頭に命令が下されなければならない。その点で永年労使関係に関わった労働者委員や使用者委員の現場感覚が生きてくる。
 今日もある事件の意見書を書き始めた。自分なりに以上の整理を念頭に意見を整理した。