障子の貼り換えで母を偲んだ2014年11月25日

 師走の雰囲気が漂い始め、家内の年末恒例行事の準備が始まった。年始に向けて家の大掃除は主婦の務めと心得ているありがたい連れ合いである。息子夫婦や娘夫婦の帰省に備えて大先輩主婦としての矜持もあるのかもしれない。
 そんなわけでとっかかりは障子の張替えだった。和室の庭に面したガラス戸内側に2枚の障子が嵌まっている。この家に転居して31年が経過した。聞けばこれまで2回の張替えをしたというが、いずれも手伝った記憶はない。今回ばかりは手伝わねばなるまいと覚悟した。
 既に古い障子紙は家内の手で剥がされ、桟は水洗いされて干してある。和室に裸の桟を寝かせて作業を開始した。市販のアイロン貼り障子紙を桟の上部に当てて位置を決め押しピンで仮止めする。円筒の障子紙を転がして障子の全面に広げ位置を決めて下部にもピン止めする。後は家内が温まったアイロンで障子紙の上から桟の全体にスライドしていく。障子紙裏面の糊が融けて桟にくっつき障子が貼られていく。はみ出した障子紙をカッターで切り取る。障子の表面を霧吹きでまんべんなく薄く水分を含ませシワやタルミを修復する。この間、約30分のあっという間の貼り換えだった。
 子供の頃の障子の張替えを手伝わされた。古い障子を剥がす際の思い切り破れる快感が今も記憶に残っている。実家は障子の多い造りの家屋だった。障子の貼り換えは母親の一日仕事だったのだろう。洗い終えたたくさんの障子の桟に手作りのご飯糊を刷毛で塗っていく。当時の障子紙は薄くて破れやすかった。それだけに障子の貼り換えの頻度も多かった筈だ。今になって亡き母親の苦労を思い遣った。