老後のマンション住まいの功罪2014年11月30日

 先日、ボランティアセンターの当番をした時のことだ。相方と来訪した先輩コーディネーターの主婦お二人と雑談した。70代の方から女性ばかりのクラス会の興味ぶかい感想を聞かされた。「お友だちのひとりが認知症気味で同じ話を繰り返す。聞けばご主人を亡くした後、独りで都会のマンション暮しをしている。日常はほとんど出かけることもなく話し相手のいない独り暮らしだ。認知症が進むのも頷けたし、閉ざされた一室で万が一の時に誰も駆けつけられない怖さを想った」。
 在住する北部西宮の戸建て住宅ばかりの新興住宅街は分譲開始後30年を経て高齢化が著しい。丘陵地を開発したため坂道が多く、マイカーが使用できなくなると買物や通院等が困難になる。終の棲家だった筈の我が家を捨てて阪神間の便利なマンションに転出する高齢世帯も目につきだした。それもやむをえないと思っていたが、先ほどの話で老後のマンション住まいの負の部分を教えられた。
 老後の住まい選びのポイントはいくつかある。日常生活の便利さは欠かせないが、それだけでは不十分だ。高齢の身を守る安全安心という点も見逃せない。鍵ひとつで外部を遮断できるマンションはその点でも優れている。
 ところがマンションのその閉鎖性ゆえの高齢者にとってのマイナス面も大きい。戸建住宅に比べて訪問者のハードルは高く、ご近所さんとの交流も減少する。外から室内を窺うことも困難で、緊急時の安否確認も思うにまかせない。老夫婦で過ごせる間はまだしも、配偶者を亡くした後の環境は一層厳しいものとなる。話し相手もなく認知症の発症や進行を促す環境に陥りやすい。また緊急時の地域での見守り環境という点でも心配である。
 老後のマンション住まいの功罪をあらためて認識し、新興住宅街の不便さをカバーしながら戸建て住宅中心の地域での新たなコミュニティーづくりの必要性を痛感した。