認知症介護の情報誌「ゆいま~る・別冊」2015年06月20日

 先日、住宅街の「介護者の会」で主宰者からある冊子が配られた。医療機関で無料で配布されている認知症介護の情報誌・ゆいま~る別冊「まんがで学ぶ認知症の方の気持ち」だった。外資系製薬会社ノバルティス ファーマ発行の情報誌だが、これが中々すぐれものだった。
 認知症はそれまで普通に暮らしてきた人が物忘れや判断力低下を来たし、着替え、入浴、トイレなどの日常生活動作(ADL)や料理、買物、乗り物利用などの手段的日常生活動作(IADL)に障害が生じる病気である。
 冊子ではこうした認知症によって引き起こされるADL障害、IADL障害、記憶障害の24の事例を4コマ漫画で取り上げ、それぞれに介護者の見方、本人の気持ち、ドクターのコメントを記載されている。例えば「皿洗いを手伝う認知症高齢者」のまんが事例では、ちゃんときれいに洗えていない様子について、「かえって手間が増える。これではやってもらわない方がまし」と思う介護者の気持ちと、「自分にもまだやれる。家族の役に立っている」という本人の気持ちの両方が記述される。ドクターは「自分でできることは少しでも続けてもらい、うまくできなくてもほめてあげることが大切。お茶やおやつなどのちょっとした報酬もいいですね」とコメントするといった具合である。
 何よりも認知症によって発症する一般的な事例を分かりやすく具体的に教えてもらえる点がいい。その上で、そうした事例についての介護者の一般的な見方が、いかに本人の気持ちと乖離しているかを告げる。ドクターコメントでその解説や処方が述べられる。「ご本人の気持ちを汲んだ介護者の方の穏やかな対応がどんな薬よりも優れた地領なのです」とは、冒頭の監修者である慶応大学の精神神経科学教授の言葉である。