NHK BSプレミアム「新日本風土記・神戸」2015年06月26日

 NHK BSプレミアム「新日本風土記」という番組が好きだ。日本各地に伝わる伝統や風習、その土地で暮らす人々の姿などを美しい映像で綴る番組である。単なる街の紹介でも紀行番組でもなく、まさしく「風土記」である。先日放映の「新日本風土記・神戸」を観た。
 イントロが実にいい。番組は、「この町にくると世界中の神様に出会える。世界の131の国の人が集う町である」というメッセージで始まる。多様な人種、多様な宗教、多様な文化、多様な価値観を包み込んだ町が港町・神戸の本質なのだろう。
 そんな神戸に暮らす人々の姿を追っていく。港のすぐそばのバーで港を語り続ける元観光船の船長だったマスター、老舗のジャズバーで今も歌い続ける74歳の女性ジャズシンガー兼ママ、生田神社に毎日のように参拝するクリスチャンのドイツ人女性、イスラムモスク、ユダヤ教会、シーク教寺院、ジャイナ教寺院など異教徒どうしが隣接し合う町並み、六甲登山を楽しむ人々、老舗洋服屋で伝統技術を伝え続ける仕立て職人、中国人と日本人が一緒になってつくりだした中華街・南京町等々。
 表面的な風景からしか理解していなかった神戸の町を、そこに住む人々の多彩な営みを映しだすことで町の本質を見事に浮き彫りにした好番組だった。