認知症実母の介護と葛藤2015年10月21日

 毎月開催されている地域の介護者の会に出席した。いつもの介護者に加えて今回は被介護者のお一人が参加された。実の娘さんが介護する認知症の90代のおばあさんだ。娘さんの押す車イスで少し遅れて参加された。
 介護者の会の2時間余りの多くが娘さんから介護の現実をお聞きすることに終始した。開口一番の「今は同居の妹との介護分担で本当に助かっています」という言葉に、それまでの辛苦が窺えた。仕事に出かけ帰宅後も母の介護を手助けしようとしない妹さんとの葛藤があったという。「私は仕事をしているんだから」という想いの妹と「できるものなら私が仕事に行きたい」という介護に明け暮れる姉の想いが交わることはない。そうした娘たちの葛藤はそのまま母のストレスとなり認知症状に悪化させていたと思うという述懐が心に刺さる。
 彼女の率直な言葉が続いた。「仕事を辞めた妹が母の介護を分担するようになって刺々しかった雰囲気が一変しました。母親の症状にも好影響を与えているはずです。認知症になっても介護する人間の気持ちは間違いなく本人に伝わってるんです。デイサービスから帰った時の母の様子でその施設の良し悪しが分かります。楽しく過ごせたときは機嫌がいいし逆の場合は不機嫌なんです。15年前に認知症を告げられてからできるだけ母の好きなことをやらせるようにサポートしてきました。結果的にそれが認知症状の進行を遅らせたのかもしれません」。
 話しながら、彼女は始終母親の肩を抱き、持参したゼリー状の介護食をせっせと口に運ぶ。「今日はよく食べるしペースも速いんです。みんなに囲まれたこの場の雰囲気が楽しいんでしょうネ」。お母さんの閉じたままだった目が突然開いていきいきと周囲を眺め始めた。居合わせた誰もがそれを目にして喜んだ。娘さんにとってもそれは日々の苛酷な介護の現実を忘れさせるひと時だったのではないか。介護者の会という居場所が介護者の饒舌を促し癒しの場を提供している。同時に私たちサポーターにとっても貴重な介護の現場の生々しくて貴重な情報をもたらしている。

コメント

_ クララ ― 2015/10/21 16:42

後 何年でもない人生です
どんに親に尽くしたと言え 亡くなると心残りはあるものです
つらい戦争に耐えてきたお母様 大事にしてください

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