「NHK あの人に会いたい 車谷長吉(作家)」2016年05月15日

 昨日の朝、リビングで新聞を読んでいると、寝起きのテレビを観ていた家内が二階から降りてきて声をかけた。「今、NHKで車谷さんのことをやってるヨ」。すぐにチャンネルを合わせると、懐かしい高校時代の同級生たちの集合写真が目に飛び込んだ。その中に車谷君が写っている。
 毎週土曜日の5時40分から10分間放送しているNHK総合テレビ「あの人に会いたい」という番組だった。毎回各界を代表する故人を取り上げその活動を収録したインタビュー等で紹介している。昨年5月に旧友・車谷君が亡くなった。その彼が早くもNHKのこうした教養番組で取り上げられていることに彼の評価の高さをあらためて知った。
 直木賞作家・車谷長吉氏とは、小学、中学、高校と同窓である。その関わりについては個人HPで綴った。http://www.asahi-net.or.jp/~lu1a-hdk/kurumatani.htm 私小説作家・車谷氏の作品は、自ら”反時代的毒虫としての私小説”と称していたように周囲の人間たちに毒をばらまき、そのこと自体を省みることはなかったように思う。ところが番組の中の晩年の収録インタビューでは、「周りの人たちに色んな迷惑をかけたかと思う」といった趣旨の発言をしている。もちろん自分自身の文学観を否定するものではなく、むしろそれを補うという視点の発言だった。それでも何か彼の晩年の境地を垣間見た気がして幾分安堵した。