長尾和弘著「『大病院信仰』どこまで続けますか」2016年06月23日

 福祉ネットや社協の取組み課題として「在宅ケア」が差し迫ったテーマになってきた。医療、看護、介護についての基礎的な知識が不可欠だ。リタイヤ以降、読み継いできた歴史小説や時代小説をひとまず中断して、在宅ケア関連の書籍を読み始めた。
 手始めに読んだのが長尾和弘・近藤誠著「家族よ、ボケと闘うな!」である。続けて長尾和弘著「『大病院信仰』どこまで続けますか」 を読んだ。サブタイトルに「町医者と大病院の賢い使い分け方」とあるように、在宅ケアを考える上でかかりつけ医と病院の使い分けの知識が必須だと思った。
 期待通りの好著だった。素人が医療全般について知っておくべき基礎的知識が平易に整理して述べられている。「世界一素晴らしい日本の皆保険制度の意義とTPPによる崩壊の危険性」「病院と診療所の違い」「大病院の専門化による縦割り医療の弊害」「大病院専門医の経糸と町医者の横糸の使い分け」「”生”情報が集まる患者の会の効用」「在宅診療の質の目安は看取り件数と看取り率」「平穏死のための延命治療の『やめどき』」「救急車を呼ぶということは蘇生処置も延命治療もフルコースでお願いしますという意思表示」「良いかかりつけ医を選ぶための16のチェック・ポイント」等々、「目から鱗」の指摘も多い。
 よくぞここまで患者視点で医療の現状を語ったものだ。素人には窺い知れない医療の内情を分かりやすく解説し、患者側のあるべき姿勢や対応が述べられている。タイトルのつけ方からも推察されるように著者の表現手法に「ケレン味」を感じる向きもあるだろう。それでも従来こうしたスタンスで医療の現状を医師の側から語った書籍は少なかった筈だ。それだけに主流とは言えたない主張に多少のケレン味があってもやむをえまい。むしろ読者を引き付けるインパクトを意識した発信力と受け止めたい。
 同じ著者の著書を追加注文した。当分この一連の読書が続きそうだ。