リオ五輪男子400mリレー決勝の劇的な舞台2016年08月20日

 リオ五輪前半の日本勢の活躍は目覚ましいものがあった。後半に移り陸上競技が中心になると期待はやや薄れる。日本人の体格、体力という肉体的な制約がこの分野での好成績の壁となって立ちはだかる。個人競技主体の陸上競技では体格や体力の優劣が競技結果を左右しやすい。
 そんな中でリレー競技は二つの点で肉体的ハンディを乗り越える可能性を秘めた種目である。ひとつは個人種目でなく4人の連携競技という点であり、今ひとつはバトンの受渡しという高度な技術を介在した競技という点である。
 リオ五輪男子400mリレー決勝では4人の日本人若者たちがこの可能性を見事に実証してみせた。100mを9秒台で走る記録保持者たちに交じって誰一人9秒台の記録を持たない。それだけに個人記録の優劣でなく4人の連携による総合力の発揮が問われた。体力面をカバーできるバトンパスは日本チームの技の本領発揮の場であった。コンマ0秒を争う短距離走にあってこの技術の優劣のウェイトは大きい。リオ五輪に向けてチームの総合力とバトンパスの抜きんでた技術力が鍛え抜かれた。
 リオ五輪男子400mリレー決勝の舞台でそれは如何なく発揮された。その劇的な舞台をテレビのライブ放映で食い入るように観た。第3走者までの見事なバトンリレーを経てアンカーのケンブリッジにバトンが渡った。画面右側をあのレジェンド・ボルトが走っている。ボルトのゴールの直後にケンブリッジが予選1位のアメリカを振り切ってゴールした。オリンピックの陸上競技決勝の舞台で日本人選手が世界のトップスターと肩を並べるようにゴールする画像は信じがたいものだった。そのゴールはアンカーだけのものではない。アンカーを含めて4人の走者が紡いだものだ。総合力とバトンパスの技術がもたらした輝かしい成果である。