鎌田實氏講演・「がんばらない」けど「あきらめない」2016年09月08日

 昨年に引き続いて今年も県社協主催の「社会福祉夏季大学」を受講した。先月の山口民児協で1名の派遣枠に希望者がないようだったので手を挙げた。著名な医師である鎌田實氏の記念講演「『がんばらない』けど『あきらめない』」をぜひ聞いておきたいと思った。
 新神戸駅近くの神戸芸術センターの広い会場に1時前に到着した。セレモニー直後の演壇も何もない広い舞台に鎌田氏が登場した。濃いグレーのTシャツに黒のジャケットを羽織ったラフなスタイルである。語り手と観客との壁を可能な限り取っ払おうという氏の講演スタイルのようだ。
 冒頭、やまゆり園の無差別殺人事件がふれられた。社会の役に立たないという理由でハンディを負った者を抹殺する思想への怒りがふれずにはおれなかった述懐される。氏の活動は驚くほど多彩で広範囲である。潰れかけた諏訪中央病院の院長として住民と一緒につくる地域医療病院として見事に再生させたのを皮切りに、チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民の医療支援、東日本震災被害者支援等、国の内外の被災者への支援活動である。
 そうした活動の原点でもある自身の生い立ちが語られる。1歳の時に実父母に捨てられ貧しい個人タクシー運転手の養父と病弱な養母に引き取られる。そうした苛酷な生い立ちの末に医学部を卒業し医師となった経緯は語られなかったが、どれほどの努力と刻苦があったのか想像に余りある。
 印象的だったのは医師らしい「オキシトシン」というホルモンの話だった。幸せホルモンとも呼ばれ、相手の立場に立ってみる時に最もよく分泌するホルモンだという。それが炎症を抑えストレスを緩和し、生きる力となる。講演で語られたテーマは一貫して「相手の立場に立って考え、行動する」ということだったと思う。
 1948年生まれの団塊世代である。その壮絶な人生に裏付けられた本物の「思い遣り活動」が「ストップ・ザ・無縁社会」をテーマに集った聴衆の心を揺さぶった。

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