鎌田 實著「がんばらない」2016年10月04日

 9月7日、県社協主催の「社会福祉夏季大学」を受講した。基調講演は諏訪中央病院長で著名な地域医療の実践者である鎌田實氏だった。示唆に富んだ貴重な講演を聞き、その著作を読んでみたいと思った。会場で販売されていた代表作「がんばらない」を購入し、ようやくその著作を読み終えた。
 期待以上の作品だった。超高齢社会を迎えた我が国の地域医療の在り方が物語風に分かりやすく綴られている。全編が著者が関わった医療現場の事例毎のエピソード風のレポートである。著者と患者のそれぞれの想いが交錯しふれあい紡がれる。人間の疾病を部品の故障という捉え方でなく、患者の生きてきた歴史に配慮し、「生きている意味」を尊重しながら治療していくものだという著者の信念が貫かれている。その意味で医療行為とは患者と医師との関わりを通じた一篇の「物語」なのだろう。
 「がんばらない」をコンセプトとした緩やかで穏やかな物語の数々を読み終えて、超高齢社会を生きていく「よすが」に触れたように思った。