鎌田 實著「1%の力」2016年10月26日

 鎌田實氏の著作「1%の力」を読んだ。今年7月の発行であり氏の最新作のようだ。処女作ともいうべき「がんばらない」の発表後16年目の著作である。処女作同様、全編が著者と関わった様々な人とのふれあいを題材としたエッセイである。
 「1%」(ほんの少し)にこだわったテーマが多面的に繰り広げられる。「あと1%」「たった1%」「1%のカラクリ」「1%でいいから」「1%誰かのために」といった具合だ。最初は「こじつけ」気味に思えた「1%」だったが、要は「がんばらないけどあきらめない」という生き方の勧めのようだ。100%の完璧さを求めるのでなく肩の力を抜いてほんの少し努力してみる。100%の見方でなくほんの少し角度を変えてみる。100%自分のために生きるのでなくほんの少し誰かのために生きてみる。
 人は往々にして完璧さを求めてしまう。それがしばしば多くの葛藤を招き挫折の縁に立たされる。「ほんの少し」がゆとりを生みだし寛大さをもたらす。そのゆとりこそが挫折からの救いをもたらし持続性を維持し「あきらめない」生き方を育んでくれる。
 団塊世代の著者とはほぼ同世代と言ってよい。人生の晩年になって共感できる人生訓にめぐり合った心境である。