鎌田實・大平光代「くらべない生き方」2016年11月09日

 鎌田實氏の著作に嵌っている。三作目の読了は大平光代氏との対談集「くらべない生き方」だった。
 「くらべない」「泣いてみる」「さらけだす」「寄りかかる」など10のメッセージについて二人が存分に語り合う。読み進みながらともすれば肩に力を入れて生きてきた自身の至らなさや愚かさに気づかされる。生き辛い過酷な時代だからこそ背伸びせずありのままの自分を受け入れることの大切さを教えられた。
 波乱万丈を乗り越えて今を生きているお二人だからこそほとぼしる「想い」の数々だろう。鎌田氏の高齢者・療養者・障がい者等の患者や被災者にかける想いや大平氏の障がいをもって誕生した愛娘への想いが生々しく伝わってくる。とりわけ大平氏の「いじめ」「障がい者」「子育て」についての処方の提示は、自身の体験に裏付けられたものだけに新鮮で説得力のある切り口だった。
 数々の珠玉の言葉もあった。「脱力系の生き方」「ひとりひとりが多様に生きられる」「みんなと同じである必要はない」「人前で泣いてしまえば泣いたもの勝ちになってしまうが、自然の涙は本当の気持ちを伝えてくれる」「誰かに寄りかかる勇気と寄りかかられた時に踏ん張って支えてあげられる力の両方が必要」。
 鎌田氏のあとがきの一節である。「大平光代と鎌田實という、わけのわからん『濃い』二人が、時に自分をさらけだしながら『生きることの意味』に向き合ってみたわけですが、うまく伝えられたかどうか」。じゅうぶん伝わりました。

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