地域コミュニティの存続と『別解力』2016年12月23日

 地域のコミュニティ組織が揺らいでいる。自治会、PTA、老人会、子供会等の組織でメンバーの退会や非加入、役員の欠員等の事態が顕著だ。背景には、共稼ぎ世帯の増大や少子高齢化、人口減少化といった時代の変化に既存の組織が対応できていないという点がある。
 退会、非加入、役員欠員の最大の要因は、所属する組織の活動や役割を分担したくないということに絞られる。共稼ぎに伴う時間的制約や高齢化に伴う肉体的負担がその理由の多くを占める。活動や役割分担を避けるために退会や非加入という選択に突き進んでしまう。会員の減少は会費収入の減少を伴い組織の存続にまで及んでしまう。とりわけ少子化や共稼ぎの影響をもろに受ける子ども会は今や多くの組織で存続の危機に瀕している。活動や役割分担の問題が退会という最終結論に直結してしまうことの怖さがある。
 先日、鎌田實氏の「〇に近い△を生きる」の書評を記事にした。要は「今の日本に必要なのは『別解力』。たった一つの『正解』に縛られるのではなく幾つもある「別解」の中から〇に近い△を見つけよう」ということである。コミュニティ組織のゆらぎへの処方箋がここにあるように終える。
 「活動や役員を引き受けるという〇か、さもなくば退会という×か」という選択肢しか持ち合わせない既存組織の稚拙さを感じてしまう。〇と×の間にいくつもの△がある。既存組織のリーダーたちは役割の多面的な分担の仕方や役割の多様性を柔軟に提示すべきだろう。メンバーたちもいきなり退会という選択でなく在籍のままどんな活動や分担なら可能かを模索する姿勢が必要だ。
 超高齢社会を迎えて地域コミュニティの役割は一層重要になっている。その存続に向けた『別解力』が問われている。