南房総絶景の旅③濃溝の滝~大山千枚田~江川海岸2017年05月19日

 南房総半島のツアー三日目である。早朝に目覚めてすぐに内湯の浴場に入った。都会の銭湯のような侘しい入浴を早々に切り上げて朝食に向かった。朝食会場のバイキングテーブルも昨日とは打って変わった貧弱さである。おまけに口にした煮筍の固さに入歯の前歯が抜け落ちるという不運に見舞われつくづくこのホテルとの相性の悪さを呪った。いつもの朝食後の散策も山の中腹に建つホテル回りを一周して切り上げた。
 ホテルから南房総半島の内陸部に向かった。今回ツアーの最大の見どころである濃溝の滝に9時45分頃に到着した。ツアーの案内パンフに掲載された写真を見て参加を決めたと言ってもよい。森林の中の遊歩道の突き当りにやってきた。歩道右手の崖下に滝が見えた。添乗員から「あれが濃溝の滝です」と案内されるが写真とはだいぶ印象が違う。左手にも下り坂の歩道が続いている。その歩道の外れの川岸に降り立った時だ。目の前にあの写真で見たままの絵画のような見事な光景が飛び込んできた。「濃溝の滝」と呼ばれる光景は正確には「亀岩の洞窟」というトンネル状の洞窟をくぐるようにして三段の小滝の流れを指すようだ。滝の前に設けられた風情のある木の遊歩道を伝って駐車場に向かった。入口には地元の名産・落花生販売の露店が営業している。驚くほど安い落花生をお土産用に買い求めた。
 内陸部を更に西に向かった。狭い農免道路を巧みなハンドルさばきで切り抜けながら大型バスが大山千枚田に到着した。房総半島のほぼ真ん中に位置する東京から最も近い千枚田と言われる。うろこ状に幾重にも連なる水田には植えられたばかりの苗がか細く揺らいでいる。自然と共生する人の営みを象徴する美しい景観に心癒されながらしばしの散策を愉しんだ。
 千枚田を出て西に向かい半島西側の海岸線にある金谷港に到着した。東京湾の対岸にある三浦半島の久里浜港と結ぶフェリーの発着場である。ここの金谷フェリーサービスで海鮮丼の昼食をとった。
 半島西側海岸線を北に向かってアクアラインのすぐ南の江川海岸に到着した。南側には広大な陸上自衛隊木更津駐屯地が広がっている。バスを降りて眺めた光景はなんの変哲もない海岸だった。海に向かって立ち並ぶ電柱がやけに目についた。ネットで調べると満潮時には電柱が海に浮かぶ光景が見られるほか夜間には対岸の京浜工業地帯の工場群のライトアップの光景がこだわり派にはたまらない撮影スポットのようだ。そうした興味のない多くのツアー仲間には退屈な時間を過ごしそそくさとバスに乗車した。
 アクアラインの「海ほたる」で小休憩し、往時に撮り損ねた海を跨ぐアクアラインの遠望をカメラに納めた。海ほたるから海中トンネルを通り羽田空港に到着した。添乗員から航空券を受け取り自由解散となる。18時半の出発まで2時間以上ある。空港ターミナル6階の展望台に出て間断なく発着する飛行機の様子を童心に戻って眺めた。地階フロアで5時前の早い夕食をとって出発ゲートに入った。ゲート前の大型テレビで横綱・稀勢の里が千代の国相手にきわどい勝負で星を拾ったシーンに思わず歓声を上げた。定刻に伊丹空港に着陸したJAL133便からワイエムパーキング迎えの車に乗り換えた。マイカーで自宅に戻ったのは空港を出てからわずか40分の8時20分だった。三泊四日の見どころ満載の「南房総半島の秘境・絶景10景を巡るツアー」が終わった。