NHKスペシャル「ミッシングワーカー」2018年06月03日

 NHKスペシャル「ミッシングワーカー」を観た。ミッシングワーカー(消えた労働者)とは、独身、非正規、介護等の働けなくなるリスクを抱えて働くことをあきらめた40代、50代の中高年のことを言うようだ。彼らは求職活動をしていないため、雇用統計上の「失業者」に反映されず、労働市場から“消えた”状態となっている。日本では、40代・50代の「失業者」数は72万人だが、失業率に反映されない「ミッシング・ワーカー」はこれを大幅に上回り、103万人と推定されている。
 番組は、三人の「ミッシング・ワーカー」の実態に密着取材をしながら解決の糸口を探る形で展開される。親の介護をきっかけに離職し、親の年金や貯金で食いつなぎながら介護を続ける現実がうつされ、親亡き後も働く意欲や環境を失ったまま漂っている。子のひきこもりと親の高齢化で孤立化・貧困化する「8050(はちまるごーまる)問題」がオーバーラップする。
 観終えて暗澹たる気分が襲ってくる。日本の貧困化はここまで深刻になっているのかと思い知らされる。5年半に及ぶ経済至上主義の安倍政権がもたらした現実にほかならない。番組では解決の糸口の事例の一端に民生委員や地区社協の活動も紹介される。ただそれはいかにもささやかで抜本的な対応にほど遠いものである。問題の所在は今日の日本社会の構造の歪みにあり、その点に切り込んだ政治改革しかない。