金木犀2018年10月01日

 大型台風24号が通過した。心配された強風豪雨の被害は我が町では軽微だったようだ。空けて今朝5時半に玄関ドアを押して外に出た。 遅くなった夜明けが街並みを薄闇に包んでいた。それでも雲ひとつない空が台風一過の秋晴れの天気を告げていた。
 山口町の集落を南北に貫いている旧道を歩いた。落ち着いたたたずまいの左右の民家のあちこちで甘酸っぱい香りが漂っている。丹念に選定された庭木の金木犀がブロック塀越しにのぞめた。咲き誇るだいだい色の短命の花弁の息遣いが伝わった。
 有馬緑道でもいつもは気づかない金木犀に遭遇する。年に一度、金木犀が自らの存在感を強烈に訴える季節が訪れていた。

藤沢周平著「無用の隠密」2018年10月02日

 久々に藤沢周平作品「無用の隠密」を再読した。表紙のサブタイトルに「未刊行初期短編」と記載されているように、著者が作家デビュー前に執筆した15編の短編時代小説が収録されている。昭和37年から39年にかけて書かれた著者30代半ばの著作である。ストーリー展開の違和感やテーマの掘り下げ不足などの不満はあるもののじゅうぶん楽しめた作品群だった。特に次の三作品が印象に残った。
 「老彫刻師の死」は古代エジプトを舞台とした著者の異色の作品だった。実在の人物・カエムヘシトという宮廷彫刻師を主人公にその妻と娘たちとの壮絶な愛憎を描いている。
 「ひでこ節」は、著者の郷里・庄内地方の温海温泉郷を舞台とした土人形師と旅芸人・お才との出会いとちぎりの物語である。土人形づくりとお才の唄う「ひでこ節」を巧みに絡ませた秀作である。
 表題作「無用の隠密」は、幕閣に命ぜられて庄内藩に潜入した隠密の消息の探索を命ぜられた隠密の物語である。20数年を経て藩情勢は変化し潜入した隠密の任務は無用となり、幕閣は隠密の存在自体を抹殺することを求めていた。こうしたテーマ設定自体が斬新だった。探索を命じられた隠密と潜入隠密の娘とのちぎりも絡めた物語性に富んだ作品だった。

男やもめの第2食堂2018年10月03日

 朝から家内がご近所さんとお出かけした。夕方まで帰らないという。昼食をどうするかと聞かれた。「適当に外食するワ」と答えた。お昼前に出かけた。外食先は色々あるが選択したのは徒歩5分の大衆食堂チェーン店「めしや食堂」だった。
 煮魚、焼き魚、揚げ物、焼き物、卵焼きなどの手づくり和食の単品がカウンターに沿って並べられ、好きな品を選択していくカフェテリア方式である。学生時代に親しんだ大衆食堂の雰囲気が味わえる。生ビールとお酒も注文できる。たまにボランティア仲間との呑み会に利用したりもする。顔見知りのお一人住まいのお年寄りが晩酌しながら夕食を摂っている姿を見かけることもある。
 カウンターに沿って玉子焼き、天ぷら、野菜炒め、マッタケご飯に加えて生ビールも注文した。家内同伴ではこうはいかない。生ビールを片手に気ままで気楽な昼食を味わった。しばしばこの店を利用しているというご近所のおじさんは「我が家の第二食堂」と呼んでいるらしい。万が一家内に先立たれたら間違いなく私も「第二食堂」と呼ぶだろう。

認知症サポートべんり帳地区版掲載の事業者訪問2018年10月04日

 福祉ネットの認知症サポートべんり帳地区版の掲載依頼のための事業者を役員が分野別に分担して訪問している。私も担当分野の医療機関10軒を訪問した。
 福祉ネットのオブザーバーやアドバイザーの病院・医院だけでなく、通院経験のある医療機関や初めて訪問する医院なども訪問した。今後の福祉ネットの地域医療との関わりを考える上での貴重な訪問活動だった。
 その場で掲載の了承頂いたり、後日FAX送信を約束頂いたりと全ての訪問先で前向きで好意的な対応を頂いた。懇談を通して認知症の地域取組みの助言をもらったり、地元基幹病院の新たな介護ケアの事業の紹介等の情報も得られた。我が町に送迎バスを乗り入れしてもらっている隣町の病院の事務部長とも初めてお会いした。認知症治療にも関わりの深い病院である。名刺交換しながら今後の連携をお願いした。
 訪問活動という地道な草の根の活動を通して新たな情報と人脈づくりの手応えを実感した。

天才?花ちゃん!2018年10月05日

 三連休を利用して花ちゃんが我が家にやってくることになった。通勤帰りにやってくる両親より一足早く花ちゃんを大津に迎えに行って我が家に連れてきた。
 ばあちゃんが買い物に出かけた3時間ばかりの間、もうすぐ3歳を迎える花ちゃんと二人だけで過ごした。次から次に色んな遊びの相手をしたが、何よりも驚いたのは花ちゃんのジグソー遊びの才能だった。
 最近この遊びに嵌っているというので、60ピースと80ピースの二つパズルを持ってきていた。難しい方の80ピースのハローキティのパズルを一緒にした。ところがじいちゃんの出番は全くなかった。手にしたピースを考える間もなく次々と台座に嵌めていく花ちゃん。角ッこや端ッこから順番にという法則とは無縁である。ど真ん中の白紙の位置のピースをいとも簡単に見つけて嵌めていく。
 80ピースをこともなげに10分ばかりで完成させた。思わずじいちゃんは「すごい!すごい!花ちゃんは天才やな~」と驚嘆の声をあげる。ふと我に返って考えてみた。何度もやった筈の同じパズルの繰り返しである。幼児の柔軟な脳細胞には砂地に水が沁みこむように情報が吸収されているのだろう。使い古したじいちゃんの脳細胞との違いは明白である。天才でも何でもないと我がジジバカぶりを思い知った。

キティちゃんの新幹線2018年10月07日

 花ちゃんの父ちゃんと母ちゃんが岡山市内に出かける用ができた。岡山には花ちゃんのおじちゃん夫婦が住んでいる。おじちゃんのマンションの横を新幹線が走っている。かねてからばあちゃんは窓から間近に見える新幹線を花ちゃんに見せたがっていた。そんなわけで花ちゃん一家とじいちゃんばあちゃんが連れ立って朝早くに我が家を出発して岡山に向かった。
 父ちゃん運転のローバーミニが加速力を活かして予想外に早く8時半頃におじちゃん宅の到着した。新築マンション4階の部屋から頻繁に新幹線が通過するようすが見て取れる。そのたびに花ちゃんは「シンカンセンやッ!」と口にしながらはしゃいでいる。
 父ちゃんと母ちゃんが用を済ませるために出かけた後、花ちゃんはおじちゃん夫婦とじいちゃんばあちゃんに連れられてお出かけした。 初めに訪ねたのはすぐ近くの「子どもの森」である。いっぱいある子供用の遊具で花ちゃんを楽しませようというおじちゃんの目論見は外れた。二歳の花ちゃんには難しすぎる遊具が多かったようだ。それでも台風襲来の予報が外れて真夏のような暑さの日差しをたっぷり浴びて散策した。
 次に向かったのはJR岡山駅前のイオンだった。店内の駄菓子屋さんでおじちゃんに駄菓子を買ってもらい、キッズコーナーでアンパンマンの玩具で遊んだ。フードコートではじいちゃんばあちゃんのかつ丼やピラフをシェアして昼食を摂った。
 11時半頃にJR岡山駅に向かった。花ちゃんにホームから間近に新幹線を見せるためだ。入場券でホームに入り、次々に入線する新幹線に歓声を上げる花ちゃん。12時半頃にはサプライズが待っていた。1日1往復のハローキティの新幹線が岡山駅に到着した。車体を鮮やかなピンクに彩られた「こだま741号」新大阪発博多行きである。車体のあちこちにキティちゃんの絵が描かれている。車体をバックにばあちゃんと一緒に撮った記念写真にご満悦だ。
 1時頃にはおじちゃんのマンションに戻り、父ちゃんと母ちゃんの帰宅を待った。おじちゃん宅から車で10分ほどのばあちゃんの実家に向かった。花ちゃんにはまたいとこに当たるお姉ちゃんやお兄ちゃんたちと束の間の交流を終えて3時半頃には岡山を後に我が家に向かった。その帰路でとんでもないトラブルが待ち受けていた。

高速道でエライコッチャ2018年10月08日

 花ちゃん一家と一緒に岡山から我が家に向かっていた。婿殿の愛車・ローバーミニが山陽自動車道の三木東インターを過ぎて快調にエンジン音を響かせていた。
 ナビが自宅到着予定まで15分を告げていた4時45分頃のことである。突然、隣で運転していた婿殿が「アレッ!エンジンの音がおかしい。変な音がしてる」と声をあげた。すると急速にスピードが落ちてきた。何とか車体を路肩に寄せたところでストップしてしまった。
 これからが大変だった。車好きの婿殿の独り舞台だった。すぐにハザードランプをつけ非常用三角板を後方に設置した。追突事故を避けるため後部座席の同乗者たちを車外に出した。幸い数メートル先に設置された非常電話のスポットでガードレールのつなぎ目があり全員そこからガードレールの外にでた。非常電話で故障を通知し後続車へのアナウンスを依頼した。応急措置を終えてからは携帯でミニの販売店に電話し、レッカー車の手配と同乗者たちの移送の手配を依頼した。
 後はひたすらレッカー車を待つほかない。ガードレール外側の盛り土の上で大人4人と幼児一人が身を寄せ合って突然のトラブルを嘆きながら待った。台風の余波なのか時おり強風が舞い、垂れこめた薄黒い雲が不気味に空を徘徊している。徐々に日暮れが進み周囲を闇が包み始める。
 待つこと2時間、ようやく赤ランプを点滅させたレッカー車が到着した。レッカーの荷台が路上に移動し動かないミニを荷台にウインチで引き込んだ。約2kmほどの最寄りの淡河PAに一同を同乗したレッカー車が到着した。ここで販売店に運ばれるミニと別れて迎えの車を待つことになった。結局、レンタカーの手配は叶わずタクシーを呼んで待つことに。この間にPA内で夕食を摂る。この間、意外にも花ちゃんは泣いたりわがままを言ったりすることもなかったのが救いだった。
 PAの脇道を抜けて従業員の通勤用の駐車スペースでタクシーをまった。7時45分頃に到着したタクシーに乗車し8時頃にようやく我が家に辿り着いた。高速道路上での車の故障という厄介で危険なトラブルに遭遇し、様々な初体験を味わった。

恒例の高齢者実態把握調査に着手2018年10月09日

先月中旬の地区民生委員協議会で高齢者実態把握調査の調査票を受け取った。毎年この時期に実施する民生委員の最も重要で大変な活動である。高齢者宅を訪問し、近況を把握するとともに困り事等を伺う。
 従来は65歳以上が対象だったが3年前から70歳以上が必須調査となり65歳から69歳は任意調査となった。任意調査の実施は各民生委員の判断に委ねられている。私の場合は新たに65歳になった方から対象から除外し5年がかりで対象者を70歳以上に移行することにした。その結果、既存対象者は転居や死亡等で年々減少し、ピーク時には200世帯300人だった対象者は、今年は170世帯270人になった。
 先月に相次いだ地区社協の敬老お祝い訪問や福祉ネットの認知症サポートべんり帳の掲載医療機関の訪問活動を終えて、ようやく高齢者実態把握調査に着手した。
 民生委員就任後11年目を迎え、11回目の高齢者訪問である。訪問先とも顔馴染みになった。訪問時にもメリハリをつけて会話ができる。問題のないお宅では簡潔に、ひとり暮らしや病いがちの方とはじっくりようすを伺う。中でも80歳以上のお一人住まいの女性の場合は待ちかねたように様々なお話をお聞きする。民生委員としてだけでなく話し相手としても頼りにされていると実感する。
 民生委員としての大切でやりがいのある高齢者訪問が始まった。

年一回の独身生活2018年10月10日

 早朝から家内が一泊二日で広島に出かけた。年一回の学生時代の同窓会である。ひとりで出かけることに消極的な人だが、この同窓会だけは50年来の親友との出会いもあり毎年参加している。
最寄りの電鉄駅までマイカーで家内を送った。私にとっての年一回の独身生活の始まりである。それでもなんといっても永年の連れ合いはありがたい。二日分の着替えやご飯やチンしたり炒めたりするだけの食材の用意を整えてくれている。
 この二日間には民生委員の高齢者実態把握調査や地区社協のふれあい喫茶、障がい者施設の秋祭りボランティアの予定が入っている。合間に撮りためた録画を観たり文化祭講座の資料整理をやることにしよう。たまには独身生活もいいものだ。

オバサントリオの笑える腹話術2018年10月11日

 月一回の地区社協主催のふれあい喫茶の日である。時に主催者の手配でイベントが催される。今回は住宅街在住者お一人を含むオバサントリオの腹話術だった。
 1時半からいつもより多い30人ほどの参加者を前にイベントが始まった。三人がそれぞれに我が子のような人形をパートナーに掛け合い漫才のような腹話術を演じる。口元の動きはぎこちないものの子供風の声音と地声を交えたトークはなかなかのものだ。トークのシナリオも自身の手になるオリジナルのようだ。結構これが笑わせてもらえる。
 合間にハンカチやロープの手品があったり、脳トレがあったりと息の合ったトリオの和気あいあいの60分ばかりのイベントだった。