NHKスペシャル 人生100年時代を生きる 第1回終の住処はどこに2018年11月20日

 NHKスペシャルが二日続けて会心の番組を放映した。「人生100年時代を生きる」をテーマとしたシリーズ番組だ。1回目は、終末期を迎えた超高齢者たちを待ち受ける住宅事情の苛酷な現実をレポートした『終の住処はどこに』がテーマである。
 終末期を迎えて在宅での自立生活が困難になった高齢者は施設入居を迫られる。比較的安くて手厚い介護が受けられる「特別養護老人ホーム(特養)」は待機者が30万人を超えハードルが高い。介護付き有料老人ホームは経済的に無理がある。そこで国は施設の担い手を“官から民”へと転換をはかる切り札として7年前に民間事業者が運営する「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」を導入した。バリヤフリーと訪問介護を備えて軽度の要介護者の受け皿にしようと多額の補助金を投入して整備を推進している。しかし、サ高住の現場では今さまざまな矛盾が噴出している。
 その最大の要因が激増する認知症高齢者の受け皿になりつつあるという点だ。要介護度は低くても“動き回る認知症高齢者”を数多く抱え、対応に追われる施設も少なくない。
 サ高住の収入源は利用者の料金と介護報酬である。介護報酬は介護度が高いほど高額である。要介護3未満で特養に入れない認知症高齢者の受け皿となりつつあるのがサ高住である。介護報酬が低いのに徘徊等の認知症介護の対応に追われ、ふくらむ人員配置で人件費は嵩むばかりだ。その結果、要介護度の高い寝たきりに近い高齢者の入居に切り替え、要介護度の低い動き回る認知症高齢者の入居を拒むという「入居者選別」の事態を招くことになる。
 要介護度の低い比較的元気な高齢者の受け皿だったはずのサ高住でそうした人たちが入居を拒まれ退去を迫られ、介護難民が生まれている。
 介護報酬の在り方も含めた国の施策の貧困さを痛感させられる好番組だった。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック