富士宮市の認知症取組みの実践事例2019年10月09日

 地域ぐるみの認知症取組みで著名な富士宮市の実践事例をお聞きする機会を得た。地区民児協の研修視察として市社協の仲介で富士宮市社協主催の視察研修会を開催して頂いたものだ。
 視察研修前にNHKスペシャルで放送された富士宮市の認知症取組みの番組DVDによる事前学習をした。オランダの福祉担当副大臣を筆頭にした視察の模様も登場する。まさしく世界が注目する認知症取組みのようだ。ただなぜそこまでの取組みができたのかは十分伝わらない。今回の視察でその事情が理解できた。
 研修会では富士宮市の二つの取組み事例が紹介されたが、何といっても前半60分の「地域における居場所について」と題した黒田寄合いサロン代表の外岡準司氏の報告が優れた実践モデルとして参考になった。富士宮市の地域ぐるみの認知症取組みの原動力になった事業モデルが氏の黒田寄り合いサロンの取組みなのだろう。以下は氏の黒田寄合いサロンの取組報告の概要である。
 氏の寄り合いサロンづくりの原点は幼い頃のお年寄りたちの日向ぼっこの輪の中に遊んだ風景にあるようだ。年齢や障害に関わらず認知症になっても地域の誰もが今まで通り仲間として楽しく集える居場所づくりである。
 直接的なきっかけは認知症発症者の地域でのトラブルだった。そこでまず認知症の事を住民が知ることから始め、認知症講座を30回以上開催する。そうして誰もが認知症や障害者に偏見を持たない下地ができてようやく居場所づくりに着手した。居場所とは「心のよりどころとなる関係性」であり、そこに居ることで感じられる安心であり、気が休まる楽しい場所である。そして2013年5月にオープンを迎える。
 サロン運営(毎週木曜、9時30分~11時30分)開催の次のようなポイントが紹介された。①準備(関係機関の手続、会場確保、費用、スタッフ、参加者見込、保険等)②会場は費用のかからない公共施設③運営スタッフは地域住民主体(行政関係者や専門職でなく)で認知症の方に対応できる認知症サポーターやキャラバンメイト等の認知症を理解している人④参加費無料、持ち込み禁止、スタッフ無償、利益を出さず予算内運営※年間予算は自治会援助2万円、社協援助6千円⑤規模(平均参加者20数人、スタッフ10数人⑥送迎は原則なしだが、認知症当事者は介護保険でヘルパー同伴⑦運営の流れ。開始15分:当番挨拶・参加者全員自己紹介・ボケない小唄&ボケます小唄・脳トレ、真ん中90分:おしゃべり(楽しく語らう居場所だから行事やイベントはやらない)、後半15分:認知症予防体操・リハビリ体操
 以上の報告を聞き、以下の感想を持った。①サロンと社協のふれあい喫茶等との棲み分けについて質問したが、基本的にはサロンは認知症カフェとのこと。そのため認知症に理解のある人たちで運営している。②住民主体の運営にこだわることで行政主導の場合の施策の変更でころころ方針が転換することのリスクを排除している③外岡氏という志の高い優れたリーダーが牽引した取組みがもたらした優れた事業モデルである。

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