オランダが見つめる日本の地縁社会2019年10月15日

 富士宮市での視察研修で気になった点があった。黒田よりあいサロンの外岡代表のプレゼンの中でオランダの福祉担当副大臣が来訪した時のことだ。副大臣はよりあいサロンの実態にふれ「なぜ、あなたたちは自分たちの街を良くしようと活動しているのか?」「財政も苦しくなってきているオランダでもこの街のように国民に自分たちの住む街を良くすることを考えてほしい」等の発言があったという。北欧の福祉国家であるオランダは、財政難から従来の福祉国家の看板を降ろし、国民の自助努力を国王自らが提唱せざるを得なくなっているという。
 かつて北欧の福祉国家は国際的にも理想のモデルだった。その構造が今揺らいでいるようだ。ひとつにはグローバル経済で国の財政基盤の独自性が維持できなくなっているのだろう。今ひとつは高齢化の進行が給付を想定以上に膨らませている筈だ。
 高齢化の最前線を突き進む日本の高齢化対応を世界が固唾をのんで見守っている。賢い日本人の知恵でどう乗り越えるのか?と。残念ながら国レベルの高齢者福祉の施策は後手に回り続けどんどん後退している。ただ日本の伝統的な地縁社会の良さがここにきて強みになっているように思う。制度や枠組みといった行政的な面は不十分でも、黒田寄合いサロンのように自分たちの住む街を良くするための住民活動は活発だ。
 その原点は外岡代表が語るように「おじいちゃんおばあちゃんの日向ぼっこの輪の中で遊ぶ子どもたちの風景」である。古来の「惣」に始まる村社会の共同体の原風景である。村社会がなし崩しに崩壊し、新興住宅地が取って代わろうとも、我が街を良くしたいという地縁社会の息吹は健在である。それが「よりあいサロン」「つどい場」「居場所」「認知症カフェ」等の様々な形で衣替えして復活している。地区社協が検討を着手した「共生型地域交流拠点」も、常設の多世代交流拠点としてその典型的なモデルになる筈だ。
 オランダの副大臣が注目したのは行政的な施策でなく、そうした住民の地域との関わりのこだわりという地縁社会の風土なのだろう。