地域コミュニティ再生のグランドデザイン⑥2021年09月15日

 西宮市は2018年度から共生型地域交流拠点の開設・運営の補助金制度を創設した。開設・運営の手引きにはその目的を「世代、分野を限定しないつながりの場」「地域の支え合いの場」と謳っているが、交流拠点設置の時代背景や環境変化に対応した趣旨・目的は触れられていない。少子高齢化、共働き世帯増、単身世帯増等の環境変化が地域コミュニティにの脆弱化をもたらしている。その結果、自治会を始めとした既存地域組織の弱体化もあり、従来の枠組みでのコミュニティ再生は限界がある。そこで従来型の枠組みでなく住民主体の自主的活動グループによる常設・共生型交流拠点づくりを通じて地域の新たなつながりづくりを促す制度を創設したということではないか。交流拠点づくりとは地域コミュニティ再生の試みに他ならない。
 その意味で、地域コミュニティ再生のグランドデザインを考える上で共生型地域交流拠点づくりに触れないわけにはいかない。これまで述べてきた自治会、民生児童委員、地区社協の連携の具体的な課題の実践は、地域コミュニティ再生のセイフティネットとしてのインフラ整備という性格をもっている。これに対し地域交流拠点は地域コミュニティ再生の強力な促進策であり切り札と言える。
 所属する地区社協を中心に当地区では2019年12月から地域交流拠点づくりを進めてきた。検討を進める過程で幾つかの本質的な課題が見えてきた。多くは制度設計で想定された枠組みと拠点づくりの現場である地域実態とのギャップに起因しているように思える。浮上してきた課題に次のような点がある。
 ひとつは、制度設計上想定された地区社協エリア(概ね小学校区)に1ケ所の拠点づくりが、地形上の制約や地区内の自治会の状況等の地域実態によってはまとめきれない点である。いわゆる複数拠点問題であるが、多額の補助金の配分問題も関係するため地域に厄介な事態を招きかねない要素を孕んでいる。
 今ひとつは、拠点活動の性格を巡る課題である。既存の交流拠点は基本的に常設拠点をベースとした「人と情報の交流拠点」の性格が強く、”カフェスタイル”の拠点が一般的である。これに対して、当地区では「人と情報と活動の交流拠点」も模索している。いわば”公民館スタイル”の拠点である。この点は会場となる施設の選択に大きく関わることもあり見逃せないポイントでもある。
 更に”老人いこいの家”等の既存の常設型活動との調整も必要になる場合がある。交流拠点の会場が地域の公共施設も有力な選択肢となるためバッティングするケースも出てくる。本質的な趣旨目的は共通するものであり共存の道筋をどのように話し合えるかが課題となる。
 交流拠点づくりは現在、コロナ禍の活動自粛もあり検討が頓挫しているが、何としても具体化を進めたい。そのためにも上記の制度設計と地域実態とのギャップを埋める対応を行政にも求めたい。

 以上、地域コミュニティ再生のグランドデザインをテーマに考察してきた。本質的な問い掛けは、危機に瀕している地域コミュニティ再生に向けての地域福祉の現場の実態を踏まえたリアリティのあるトータルなビジョンの策定である。そのインフラ整備に欠かせないのが地域福祉の主要な役割を担う自治会、民生児童委員、地区社協のそれぞれの問題点と課題を把握した上での相互の連携によるコミュニティのセイフティネットの再構築である。更に共生型地域交流拠点という制度活用によるコミュニティ再生の加速化策の実践がある。

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