ジェフリー・アーチャー著「十二本の毒矢」2022年09月27日

 ジェフリー・アーチャ-の再読6巻目「十二本の毒矢」を読み終えた。著者の唯一の短編集である。
 著者は稀代のストリーテラーでありエンターテインメント作家である。その才能はこれまで再読した5編の長編小説でいかんなく発揮されていた。それだけにこの作家の短編小説の才能に寄せる期待も大きかった。
 この点について「解説」氏の次のような解説が興味深かった。「すぐれた長編を書く才能と、すぐれた短編を書く才能は、かならずしもひとりの作家のなかで結びつくとは限らない。短編の場合は、題材や着想よりも、むしろそれらの処理の仕方が作品の優劣を左右する傾向が強いだけに、まがいものの才能は馬脚をあらわしやすい。その点でも、ここに収められた12本の切先鋭い矢によって、作者の並々ならぬ才能は実証されたといってよいだろう。」
 個人的には「解説氏」のこのコメントにほとんど賛成である。但し結論部分には異論がある。様々な題材や着想には敬服するが、処理の仕方には不満足だった。短編ゆえのストーリー展開の面白さが感じられない。”イギリスの伝統的な短編小説の手法”で語られているとのことだが、その妙味を知らない読者には不本意なコメントに思える。

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