障がい当事者が”親亡き後”を発信2023年05月10日

 市社協から障がい者支援の学習会の案内が届いた。”障がい当事者の自立ってなんだ?”のキャッチコピーとともに「当事者視点で考える『親亡き後』『親離れ』」の紹介記事が気になった。障がい者支援では関係者にとって『親亡き後』が深刻なテーマである。そのことを家族から聞くことはあったが、当事者からは聞いたことがない。今回の勉強会ではその点が聞けそうだ。早速受講を申し込んだ。
 会場の山口公民館に30数名が受講した。講師は脳性麻痺当事者で36歳の茂上裕太郎氏である。冒頭に刺激的な自己紹介があった。プロジェクターに2枚のシートが映される。1枚目は「その人は歩くことができません。その人はおむつをあてています。その人はヨダレをよく垂らします等々。その人は何歳でしょうか」。2枚目は「その人はビールが好きです。その人は運転免許を持っています。その人は結婚しています。その人は社会福祉士です。その人は何歳でしょうか」。次のシートで答えが明かされる。「1枚目はADL(日常生活動作)が0~1歳児程度の茂上裕太郎です。2枚目は36歳のおっさんの茂上裕太郎です」。
 障がい当事者のもつ二面性をあるがままに伝えた見事な「ツカミ」である。聴衆の気持を鷲掴みするインパクトがある。重度の障害を背負って生きてきた36年の人生のエッセンスの紹介が勉強会の趣旨を端的に表現している。
 さて個人的な関心事だった「親亡き後」についての障がい当事者である茂上氏のコメントである。氏は「障害者の自立生活」について「従来の「自分で何でもやること」から「自分で生活動作ができなくてもヘルパーに指示して自分の生活を作っていけば生活できる」という。それを「自己決定自立」という形で実現している。その自立生活を前提に『親亡き後』について次のようにコメントする。「親は必ず先に死ぬ。自立してないと困るのは僕」「依存先を増やしていくことが自立ではないか」というスタンスを明らかにする。自ら切り開いてきた過ごし方に裏付けられた明快な主張である。「できないことはできない。できる環境を自分で整える」というコメントに『目から鱗』の想いをもたらされた。
 久々に受講した勉強会は、説得力のある心揺さぶられる講座だった。