厚労省の認知症の地域支援策の稚拙さ2021年05月10日

 認知症ケアは家族がご近所に知られたくないという意識もあってともすれば家族介護に偏りがちである。その結果、デイサービス利用時を除けば、当事者は自宅にこもりがちで症状を進行させる要因になっている。
 認知症ケアにはに地域ぐるみの支援が欠かせない。地域住民の多数に認知症についての正確な知識と理解が浸透し、当事者の外出や交流の場で適切なに接する環境づくりが必要だ。そうした地域の風土があって初めて当事者やその家族は安心して認知症発症をご近所にオープンにできる。
 厚労省は、そのための啓発活動の施策として「認知症サポーター養成講座」と「キャラバンメイト(認知症サポーター養成講座の講師役)」を用意している。
 認知症の地域支援に関わって数年になる。この間、何度か認知症サポーター養成講座を受講しオレンジリングも何個か貰った。ただ”サポーター養成”を謳ったこの講座の趣旨と実態の乖離に違和感を覚えた。この講座を受講したところで認知症サポーターという意識にはなれない。この講座の実態はどう考えても「認知症入門講座」である。にもかかわらず「サポーター養成講座」というタイトルだけに一般住民もサポーターを目指すほどの意識はないため受講そのものにためらいを覚えてしまう。反面、認知症の基礎知識だけは知っていおきたいというニーズは確実に増えている。「認知症入門講座」を謳った講座ならもっと受講者は増え、認知症理解の地域のすそ野が広がる筈である。
 他方で、この講座の講師役育成のための「キャラバン・メイト養成研修」がある。関心があって受講申し込みをしたがコロンア禍の講座中止で受講できていないが、おそらくこの講座こそ本来の地域で認知症支援の核となる「サポーター養成講座」なのだろう。人に教えるという役割を意識した時、誰しも本気で取り組み地域支援の意欲も強くなる。キャラバン・メイトなどと奇をてらった名称も頂けない。実態に照らして素直に「サポーター養成講座」を謳う方が応募者も増えると思う。また”講座の講師役”に重きを置く必要もない。コロナ禍等で講座が開催されないことを活動停止の言い訳にされかねない。むしろ認知症地域支援の活動者としての役割をメインにすべきではないか。受講者はキャラバン・メイトとして所管部署に登録されている筈だ。この登録者リストこそ貴重な地域資源である。地域包括ケアシステムの対象エリア内の登録者グループの懇談会や連携組織づくりの基礎データとなる。”個人情報の壁”等を取っ払う必要がある。
 認知症サポーター養成講座の企画、認知症ケアパスづくり、認知症カフェ立上げ支援等の認知地域支援に関わった。そうした体験を踏まえて、厚労省の認知症の地域支援策の稚拙さを綴ってみた。

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