コロナ禍で浮上した民主主義と資本主義の課題2022年01月11日

 朝刊の気になる記事が目についた。”コロナ時代を読む”というシリーズ記事で「民主・資本主義を再構築」と題した記事である。内容は「マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る」という書籍を紹介したものである。コロナ禍で民主主義や資本主義の様々な問題が浮き彫りになったという。
 民主主義についていえば、アメリカは世界で最多の感染者数や死者数を出す一方、中国は情報に疑いはあるもののそれらの数値は格段に少ない。そこで感染拡大防止という点では中国の強権的統治体制が効果的ではないかという見方が出てくる。だからといって民主主義を否定するわけにはいかない。問われているのは統治の「手法」でなく「価値観」だ。ガブリエルはこうした危機の時代こそ”真の民主主義復活のチャンス”だという。そのキーワードは「参加と責任」だが、国政選挙などで投票しても参加意識は持ちづらい。そのため責任を負うことにも消極的になりがちだ。しかし小さなコミュニティであれば参加や責任は身近なものになる。要は民主主義の復活は足元のコミュニティでの地道な実践から始めるしかない。こうした論点に同感するほかないと思った。地区社協はじめ自治会等の地域組織での多様な声を受け止め吸いあげていくことの大切さをあらためて噛み締めた。
 コロナ禍で資本主義の問題も顕在化した。新自由主義化した資本主義の「全てを市場に委ねればうまくいく」という信仰が過剰な自己責任を問い、コロナ禍の過酷な現実が社会的弱者を直撃し、格差社会や貧困の拡大等の問題を噴出させた。そんな中でガブリエルは倫理と経済をもう一度つなぎ直そうと主張する。それは”日本の資本主義の父”渋沢栄一の道徳と経済は表裏一体という理念にも通じる。そして昨年発表された財界総本山の経団連の新成長戦略に「新しい資本主義の形」として盛り込まれた理念でもある。また岸田首相の「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトにした「新しい資本主義」の理念としても位置付けられている。
 こうした流れを整理し、コロナ禍で求められているのは、対症療法的な施策というより、民主主義や資本主義の根幹にある価値観や理念の再構築ではないかとされる。コロナ禍はピンチだが、生物や自然とも共生できる人間の在り方等の普遍的な価値観を模索する契機となるのではないかという主張に共感した。

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