塩野七生著「ローマ人の物語27」2024年11月12日

 塩野七生著「ローマ人の物語27」を再読した。この巻はサブタイトルに「すべての道はローマに通ず」と題された古代ローマの”インフラ”を扱った上下二巻の上巻である。この巻ではハードなインフラである”街道”と”橋”及びその使用者たちが克明に記述されている。
 巻頭で著者は、古代ローマのインフラを総合的に取上げた著作が全くないことを指摘し、その理由を現代の学問の専門化とインフラという分野の叙述の困難さをあげている。それだけに著者が古代ローマの総合的なインフラについての著述を書き上げたことの自負が窺える。
 この二巻は、全43巻の中でも極めて異色な構成である。両巻共に上質紙のカラーの図版が30頁、40頁も挟まれている。インフラという叙述の難しい分野をビジュアルに伝えようというコストをかけた試みに脱帽した。それでいて価格は他の巻と同レベルに押さえられている。内容的にも他の巻が人物歴伝風の年代史であるのに対し、インフラを構成する主たるパーツの詳細で総合的な記述である。
 ハードなインフラの基盤である街道を理解する上で30~31頁見開きのローマ帝国最大判図の地図は極めて貴重である。首都ローマが見事に広大な地図の中心に位置している。ローマから全方向に街道がくまなく張り巡らされている。判図辺境の国境沿いには主要な地点に軍団基地が置かれている。「すべての道はローマに通ず」をビジュアルに端的に表現した地図である。

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