真夏の夜の夢2006年09月04日

 カナダに語学留学中の娘が1年半ぶりにようやく帰ってくる。娘の部屋の掃除に取りかかった妻は、何を思ったかその他の部屋もどんどん片付けを始めた。老後の生活に切り替えるべく家中のガラクタをこの際一掃しようということらしい。帰宅の都度、玄関前にはガラクタの山が高くなる。
 昨日帰宅後、妻から「2階の奥のタンスの引出しからこんなもんが出てきた」と、一通の預金通帳を渡された。職場近くの銀行発行の私名義のもので平成元年日付の入出金明細が記載されている。20年近く前のものだ。残高はナント13万円となっている。記憶は定かでないが、忘れていたヘソクリがはからずも発見された可能性もある。通帳捺印の当時の銀行印が会社のデスクにあるかどうかが心配だが、うまく残高が手に入れば、この際、発見者にも何がしかの謝礼はやむを得まい。などと取らぬ狸の皮算用・・・。
 今日、出勤してデスクから無事、銀行印を確認。昼休みに勇んで銀行の窓口に。「なにぶん古い通帳ですので本店のコンピュータを調べるのに時間がかかります」とのこと。待つこと30分。担当の女性行員の呼び声で再びカウンターに。彼女の笑顔が幸運の女神に見えてくる。
 「お待たせしました。見つかりました。どう致しましょうか。」「全額引き出して下さい」「では163円お引出しします」「エッ!163円?」「記帳されていませんが、記帳残高後にお引出しがあり、残高は163円となっております」
 笑顔の正体を、その時になって悟った。女性行員は単に自分の仕事の達成を、顧客と分かち合いたかっただけなのだ。顧客の期待とのこれほどの落差はない。
 冷静に考えれば13万もの金額を放置する筈はない。かくして「真夏の夜の夢」が醒めた。