取り残された稲穂2010年10月31日

 出合った知人たちと、つい口にしてしまう気候の挨拶がある。「先日まで猛暑をぼやいていたのに、秋を飛び越して。いきなり冬になりましたネ。日本に四季がなくなってしまったみたい」。心の中で「まるで士気を失った日本のようだ」と呟いていた。
 そんな寒気の忍び寄る今朝の散歩道だった。住宅街を出た所の農地の一角で違和感のある風景が目にとまった。どこの稲田もとっくに借り入れを終え、切り株跡を緑の苗のような草が覆っている時期である。ところがその一角だけはいまだに黄色い稲穂で染められていた。近づいてみると稲穂の残る田圃の一隅だけが刈り取られささやかにハザカケされていた。周囲の稲穂は盛りを越えて思い切り頭を下げ干からびた雰囲気を漂わせていた。
 ここまで丹精を籠めて育てられた稲田の栽培者の身に何事かが起ったのだろうか。中途半端に中断された刈入れ作業の背景を思わずにおれなかった。老夫婦が余生を愉しみながら育んだ稲田なのだろうか。どちらかが突然の病に倒れたのではないか。放置された稲田を思い遣りながら闘病と看病の日々がやってきた。そんな想像が駆け巡った。