BS歴史館「不屈の英雄アテルイ」2013年02月01日

 昨晩、BS歴史館「不屈の英雄アテルイ」を観た。現在放映中のNHKのBS時代劇「火怨・北の英雄 アテルイ伝」の解説番組といった観もある。番組紹介では「1200年前、平安京を築いた桓武天皇が、どうしても打ち負かせなかった不屈のリーダーが東北にいた。その名はアテルイ!(略)アテルイたちが強かったのはなぜか? 最新の発掘や研究から浮かび上がったのは、東北の自然の中で培った驚きの戦闘能力と、広大な交易ネットワークを操る知恵。そのリーダー、アテルイの実像に迫る!」とある。
 番組では、桓武天皇とアテルイの闘いを、天皇制集権国家と蝦夷と呼ばれた東北各地の先住民族を束ねた族長リーダー・アテルイとの闘いとして捉える。アテルイたちのの強さ秘密は、狩猟民族の伝統的な弓矢と東北地方に豊富な馬による戦闘力だったと指摘する。加えてアテルイは類まれな武将としての資質の他に、オホーツク文化圏と大和文化圏の接点に位置して広範な交易の管理者だったとの説を紹介する。その交易による莫大な富が、大和朝廷との20年に渡る3度の闘いに屈することのなかった経済基盤だった。
 長きに渡る闘いは、3度目の闘いでアテルイ率いる蝦夷軍が、アテルイと副将モレが500人の部隊とともに投降することで決着をみる。征夷大将軍・坂上田村麻呂の族長切り崩し工作によって弱体化した蝦夷軍の行末を憂慮した末のアテルイの決断だったと描かれる。
 壮大でドラマチックなドキュメンタリー番組だった。そして随所に説得力のある解説が施されていた。とりわけ俳優であり著名な考古学研究者である苅谷俊介氏の「アテルイは、自然と共存した1万年の縄文時代を背負った武将だった」との指摘に共感した。稲作中心の弥生文化を背負った大和朝廷との闘いという視点が新鮮だった。
 大震災後の東北復興に向けた様々な支援が欠かせない。この番組も古代東北の英雄にあらためて焦点をあて、皇国史観のもとでタブー視されていた逆賊アテルイの復権を描くことで東北を応援している。

せせらぎ2013年02月02日

 昨日の早朝だった。日の出前の有馬川堤は、薄闇の残照を残しながら張りつめた空気に包まれて目覚めの時を迎えていた。数羽の子鴨の群れが幼げな鳴き声をあげながら水面を回遊していた。
 石積みの堰を流れ落ちる水が、心地良いせせらぎを生み出している。せせらぎに招かれて堰を見つめた。せせらぎの美しい光景があった。どこまでも澄み切った水が堰の段差を落ちる時、真っ白に変身して水面を泡立てている。

「焼きガキ食べ放題と伊勢神宮」日帰りツアー2013年02月03日

 昨日、家内と二人で日帰りバスツアー「焼きガキ食べ放題と伊勢神宮」に出かけた。旬の牡蠣を思い切り味わいたいという私とおかげ横丁に行ってみたいという家内の両方のお目当てを満たすツアーだった。
 朝7時にJR三田駅前を出発したツアーバスは、宝塚、川西、池田で同乗者を拾って満席になって伊勢に向った。途中、伊勢自動車道の安濃SAでトイレ休憩をとり、11時半に鳥羽浦村の昼食会場「かき膳」に到着した。
 かき膳は、伊勢湾に面した志摩半島の東端の岬にある。工場のような建物2階に木のテーブルが並び、テーブルにはバーベキューコンロを中心に焼きガキ食べ放題セットの料理が待ちかまえている。大盛りの焼きガキ用の殻付き牡蠣、カキフライ、カキ鍋、カキの佃煮、カキご飯である。焼き上がった牡蠣から煮汁が出だすとナイフで殻を開いてコンロに戻す。片側の殻にのせた牡蠣が乾燥しだすと食べ頃である。殻が弾けてパーンと大音量を発し、殻や煮汁が飛び散ったりする。テーブルのツアー仲間6人と「命懸けやな~」などと大騒ぎしながらアツアツの牡蠣を味わう。食べ放題とはいえ焼きガキメインではせいぜい60分が限度だ。12時半には出発した。
 途中、鳥羽の海産物店に立ち寄り、干物などのお土産を調達した後、伊勢神宮に向かった。ツアーには90分の伊勢神宮・内宮参拝とおかげ横丁散策が組み込まれている。2時前に伊勢時神宮前の駐車場に到着し自由散策となった。小学校の修学旅行以来の内宮参拝である。宇治橋を渡り参道に入る。さすがにお伊勢参りの伝統は今尚残されている。長い参道を予想以上の列をなして参拝客が埋めている。両脇に聳える樹齢を重ねた檜の大木の間を15分ばかり歩いてようやく拝殿に着いた。参拝を済ませて再び宇治橋に戻った。
 五十鈴川沿いに北側に向かって「おはらい町」が延びている。江戸時代以降のお伊勢さん詣での参拝客で栄えた門前町である。美しい石畳の通りには、今も切妻・入母屋・妻入り様式の美しい町並みが軒を連ねている。通りの両脇を土産物や飲食店などの商家が並ぶ。中ほどの赤福本店ではできたての赤福餅が店内で食べられる。立錐の余地もない店内の五十鈴川沿い縁に腰かけて、3個280円の赤福を味わった。赤福本店の向いに江戸時代の風情を復元した「おかげ横丁」が広がっている。芝居小屋風のおかげ座、太鼓櫓、かみしばい広場、茶屋、飲食店、土産物店など53店舗が十字の横丁を構成する。
 3時半に伊勢神宮駐車場を出発し帰路についた。往路と同じ三カ所でツアー仲間が順に下車し、三田到着は7時20分だった。駅前の阪急オアシスで夕食の食材を調達し、駅裏の駐車場からマイカーで帰宅したのは8時前だった。夫婦二人の老後のお手軽ツアーを愉しんだ。

恵方巻き2013年02月04日

 節分の昨日の我が家の夕食は、きっちり巻寿司だった。言わずと知れた恵方巻きである。老夫婦二人の生活になって、四季折々の歳時期に合わせた献立が多くなった。正月のおせち、春の七草、節分の恵方巻き、雛祭りのちらし寿司、土用の丑のうなぎ、冬至のカボチャ、年越し蕎麦といった具合である。
 子どもたちがいなくなって、我が家の料理長も世代の違いへの気遣いが不要になった。あれこれ迷わずとも年寄りには季節に応じた献立が好ましい。歳時期の献立は、その時期の旬の素材がベースである。それだけに安価で美味しいという智恵が籠っている。同時に食卓に季節を感じることが、齢を重ねた年寄りには何よりのご馳走となる。
 焼きアナゴ、卵焼き、海老、蟹風味、牛肉、しその葉、三つ葉などの様々な具を巻いた家内の手作り巻寿司を味わった。ただ昨晩から今日の昼食までの三食の巻寿司を手抜きではないかとは言うまい。

北重人「蒼火(あおび)」2013年02月05日

 北重人の二冊目の文庫本「蒼火」を読んだ。2007年に第9回大藪春彦賞を受賞した作品で、それだけに時代物推理小説の趣きがあった。ただ読後感としては、先に読んだ短編集「汐のなごり」の方が良かった。
 有力旗本の妾腹で無頼の果てに市井の浪人となった立原周之介が主人公で、何作かのシリーズの一作のようだ。この作品は、周之介が、人を殺すことに取り憑かれ辻斬りを繰り返す剣鬼との闘いを描いた長編小説である。
 ストーリー展開、登場人物の構成などはよくできた作品であると思った。とりわけ、かっての親友の妹で周之介と交わることになるヒロイン・市弥の描き方は秀逸だ。情景描写の巧みさとともに作者の並々ならぬ筆力を感じさせてくれる。
 残念なのは、「汐のなごり」で味あわせてもらったしっとりした情感がこの作品には希薄な点だ。ミステリー仕立ての作品故のものかもしれない。それでも確かな力量を持った本格的時代小説作家であることは間違いない。ネットで更に三冊の作品をオーダーした。

介護実技の研修会2013年02月06日

 朝10時から、コミュニティーセンターで社協のボランティア研修会があった。社協分区の登録ボランティアを対象とした研修会だ。今回は山口地域包括センターのスタッフによる「介護の実技とお話し」がテーマである。社協広報紙の編集担当として取材を兼ねて参加した。
 山口地域包括センターには、主任ケアマネージャー、社会福祉士、看護師の三名の常勤スタッフがいる。今日の研修会には三名全員で講師陣を務めその意気込みが伝わった。片や受講者も30数名と福祉講座としてはいつになく多い。
 冒頭、社会福祉士さんから、介護に関わる基礎的な話があった。「寝たきりになりやすい主な原因となる脳卒中と骨折の予防が大切。過度の労わりや安静が依存を高め、ずるずると寝たきりにつながりやすい。早目のリハビリが昨日回復を早める。入院中だけでなく退院後の歩行訓練等のリハビリ継続が機能回復に不可欠。朝は着替えて生活にメリハリをつけることで自立の気力を維持できる。自立の意欲を削がないためにも住いのバリアフリー化の環境整備は欠かせない。家族や介護者だけでサポートを抱え込まず、悩みや問題解決のために地域サービスを積極的に活用しよう。」といった内容だった。
 その後、看護師さんによる介護実技の講習があった。運び込まれた介護用ベッドでの寝返りや起き上がり介助の仕方を学んだ。車椅子の乗り降りや移動介助の講習もあった。
 受講者の多くは中高年の女性である。これから介護が待ち受ける人や既に介護経験を終えた人など様々だ。10人程度の年配男性の姿もあった。
 地域ぐるみで高齢化を迎えている。介護や介助が迫っている。初めての介護実習の研修を身近なテーマと受け止めながら受講した。

旅行・自分史(幼少期)2013年02月07日

 旅の醍醐味は、非日常の世界に遊ぶことだと思う。旅先での初めて見る美しい風景や珍しい体験が感動をもたらす。日々の平坦な日常では決して味わえないシーンが、その後の人生に良き思い出や追憶を残してくれる。
 私にとっての最初の旅の思い出は、小学校低学年にさかのぼる。小学時代は毎年夏休みの20日間ほどを弟と二人で叔母の家で過ごした。実家の姫路から30kmほど北西にある山合いの町・山崎町は私にとって第二の故郷といった郷愁がある。母親に連れられて神姫バスの姫路ターミナルに行くと、そこから子ども二人でバスに乗車する。山崎ターミナルには叔母か年嵩の従兄たちが待ってくれていた。町の雰囲気が漂う街道沿いの実家と違い、山崎は山や川や池や田圃に囲まれた自然いっぱいの里山だった。同年代の男の子たちと冒険に満ちた遊びに興じた思い出深い非日常の旅だった。
 小学校高学年になって、突然もうひとつの冒険の旅が訪れた。近所の駄菓子屋で、弟が籤引き付き駄菓子の大当たりを引いてしまった。確かカバヤの玩具菓子の景品だったと思う。何と!大阪の飛行場からの遊覧飛行が景品だった。昭和30年頃のことである。庶民が飛行機に乗ることなど及びもつかない時代だった。実は弟とはいえ双子の兄弟だった。生まれてこの方、何から何まで全て一緒というのが両親の教育方針だった。今回も例外は許されない。弟だけを行かせるわけにはいかないと、親たちは様々な方策を講じたようだ。結局、兄弟二人で出かけることになった。今にして思えば親たちはどんな手を使ったのかと感心する他ない。
 八尾飛行場からの遊覧飛行だった。搭乗したのは零戦のようなプロペラ機だった。風防の付いたコックピットの操縦席の後ろのシートに乗せられた。猛烈な風切り音の中で操縦者が後方の子どもたちに向かって大声でガイドしてくれていたことが今も脳裏に焼きついている。わずか10数分の飛行だったと思う。それでもこれまでの人生で最も忘れ難い非日常との遭遇の旅だったことはまぎれもない。

BS-TBS「我が家で生きぬく~在宅終末医療のいま~」2013年02月08日

 2月3日(日)夜7時からのBS-TBSの2時間番組の日曜特番「我が家で生きぬく~在宅終末医療のいま~」の録画を観た。前週放映の「筑紫哲也・明日への伝言~『残日録』をたどる旅」http://ahidaka.asablo.jp/blog/2013/01/29/6705681に続く、メッセージ性の高い好番組だった。民放ながらBS-TBSのこのシリーズの硬派で真摯な番組作りに拍手した。
 超高齢化社会を迎えつつある現在、「在宅終末医療」は今後の重要なテーマとなるにちがいない。永年住み慣れた我が家で最後を迎えたいという願いは多くの人に共通するだろう。ところがそれには多くの障害と課題が横たわっている。番組はその現実を多角的に取材してリアルに伝えている。
 「在宅医療と介護のあり方」をライフワークとする元TBSアナウンサーの進藤晶子さんが取材アナウンサーとして番組を進行する。在宅終末医療に関わる多くの関係者を取材する。在宅医療専門医師、訪問看護師、ホームヘルパー、ケアマネージャーなどである。こうした関係者の連携とサポート抜きには在宅終末医療は叶わない。ところが現実には、そうした施設や機能をカバーする態勢は極めて不十分だ。取材を通してそれぞれの分野での課題や障害が浮かび上がる。終末を迎える多くの高齢者は病院で看取られる他はないのが現実である。
 そんな中で、番組終盤では、末期癌で余命2カ月と宣告され、在宅医療を選択して最後を迎えた73歳の男性の死に至るまでの経過を、2年にわたる長期取材で克明に伝えている。元気で愛犬との散歩を楽しむ男性が徐々に衰弱していく。それでも男性は在宅専門医、訪問看護師のサポートと妻の手厚い介護を受けながら、坦々と死を見つめ受け入れる。カメラの前で、気がかりは後に残された妻のことだけと語り、永年の妻の献身に感謝の言葉を口にする。そして余命2カ月の宣告から7ヶ月を経て静かに息を引き取った。
 男性の幸せな終末の一部始終を見させてもらった。同時にそれが多くの幸運に恵まれた終末だったろうとも思った。何よりも最後を看取ってもらえる配偶者に恵まれていた。実際、彼の妻への「同じ状況で終末を迎えたら在宅と入院のどちらを選ぶか」という進藤さんの問いに、彼女は次のように答えている。「主人がいたら在宅を選ぶが、もういない状態では子どもたちに迷惑をかけられないので入院を選ぶ」と。
 「在宅終末医療」という願いを実現する上での多くの課題を教えられた。そしてその課題の最も欠かせない重要な点が、パートナーとの絆にあることもあらためて痛感させられた。

有馬川仁木家の和の料理2013年02月09日

 昨晩、滋賀に嫁いでいる娘が三連休を利用して帰省した。出産で実家に戻っている同級生に出産祝いを届けるためだ。家内の手造り味噌の手伝いと継承という目的も兼ねていた。
 昼食は、久々に娘を迎えて、徒歩10分の有馬川仁木家に出かけることにした。中国料理の方は1度味わったので、もう一方の和の料理の1800円のランチコースを予約した。1時の予約だが12時45分頃に着くとすぐに案内されて料理が運ばれた。
 最初は、仁木家の特製味噌をつけて食べる新鮮野菜である。どの店で食べても確かな素材の甘さが漂う。続いて野菜たっぷりの焼き八寸が出る。リンゴの白和え、ホウレン草お浸し、焼き鮭、だし巻き卵などが素材の味を活かして薄味に仕立てられている。次に出されたのは野菜中心の揚げ立てのテンプラだった。最後の料理は炊き込みご飯と味噌汁だ。これまた思い切り薄味でヘルシーな仕立てだった。デザートの飲物とスイーツは選択できる。オーダーしたブレンドコーヒーとシフォンケーキを味わった。
 「ウリ」である新鮮野菜をベースとしたお手軽ながら贅沢感のあるコースだった。仁木家の蕎麦会席、イタリアン、中華に続く和食の店である。新鮮野菜をコンセプトに四つの業態の店を値頃感と贅沢感を巧みに演出しながら展開している仁木家のしたたかさに舌を巻いた。

映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」2013年02月09日

 映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」の録画を観た。盛り沢山のテーマと美しい田園風景に彩られた心和む作品だった。最近観た映画の中では最も質の高い作品だと思った。
 中井貴一演じる大手家電メーカーの経営企画室長のエリート社員・筒井が主人公である。取締役昇進が内定し順風満帆の49歳の主人公に、ふる里の島根県出雲市で独り暮らしをしている母親が倒れたという一報が入る。そんな時、同期入社の親友が交通事故で亡くなる。リストラで閉鎖された工場長だった彼は、死の直前に「これからは自分の好きな仕事をやりたい」と告げていた。帰郷した主人公は主治医から母親が余命がいくばくもないことを告げられる。これまでの人生を顧みながら、これからの人生の選択を迫られた筒井は、子供の頃の夢だった郷里の一畑電車の運転手になることを決意する。退職し一畑電鉄に採用された筒井は無事に運転手として再出発する。大学生の独り娘も祖母の看病でふる里に同居した。自分の店をもって東京で独り暮らしの別居生活をしている妻はこのままでいいのかと悩んでいる。筒井の活き活きとした運転手姿をみて、「このままの夫婦でいいのね」と告げる。
 「人生の岐路に立った時の選択の在り方」「仕事中心の都会暮らしの果てに訪れるふる里の田舎暮らしという選択肢」「家庭を顧みず仕事一筋の夫と子育てを終えて空白を持てあます妻という夫婦の形」「存続が危ぶまれるローカル電車の実情と再生」「鉄道映画としての娯楽性」等々、この作品にこめられた様々なテーマを思い浮かべた。それぞれにこの作品なりの回答が用意されている。
 この作品の興行成績も好成績だったようだ。いくつかの映画賞も受賞している。舞台となった一畑電車の利用者数も次第に増加し前年比10%増となったという。この波及効果もあって第2弾「「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」も上映された。ぜひ観てみたいという感想こそがこの作品への個人的評価である。