田中芳樹著「銀河英雄伝説10(最終巻)」2025年11月17日

  田中芳樹著「銀河英雄伝説10」を再読した。最終巻である。新書版にして全10巻の超大作を7月中旬から11月中旬にかけて約3カ月かけて再読したことになる。私のピッチとしては早い読了だったという気がする。それほどに面白くて夢中になった作品だった。
 前巻では、主人公のひとりヤン・ウエンリーが姿を消し、主人公に次ぐ登場人物のロイエンタールもまた姿を消した。作者は『皆殺しの田中』と呼ばれているようです」とあとがきで読者の声にふれている。さもありなんである。そして最終巻は期待通り主人公ラインハルトの長年の主席秘書官ヒルダとの婚姻で幕を開け、不吉な予想通り主人公ラインハルトの病による死をもって幕を閉じる。
 最終巻だけに全巻をとうして次々と登場した膨大な個性豊かな人物たちの行く末が語られる。最終巻にそれらを一気に語らねばならないためどうしても描写が雑になるきらいがあった。
 それでも印象的で鮮やかな結末として描かれたのは物語の最高の敵役オーベルシュタインの末路だった。彼は陰謀集団の地球教徒の残党たちに死の床にあるラインハルトを襲わせる筋書きを立てる。ラインハルトの死後お帝国の安寧のためには地球教徒を一人残らず生かしておけないとの判断である。しかも彼らの標的の場所をラインハルトの病室でなく自分自身の居室に導いている。陰謀によってラインハルトに忠誠を誓ったオーベルシュタインの真骨頂が描かれていた。
 長いワクワク感のある長編を読了した後の喪失感がある。外伝3巻が辛うじてそれを埋めてくれる。