五木寛之著「青年は荒野をめざす」2010年01月30日

 五木寛之の「青年は荒野をめざす」を読んだ。私が学生だった1967年の著作である。かって早稲田大学露文学科に籍を置いた35歳の作者が、その2年前に体験したソ連と北欧の旅が下敷きとなっている。ロシア、放浪の旅、ジャズ、青春、時代の息吹などを織り込んだアップテンポな作品だ。
 1960年代、私は青春真っ只中にいた。学生運動への失望感の後の退廃の中で、モダンジャズのスイングに身をおきながらこの作品を読んだ。タイトルのカッコよさに魅かれ手にしたこの作品を一気に読まされた記憶がよみがえる。当時の若者たちの気分を見事に鷲づかみした作品だった。
 40年ぶりの再読だった。ワクワクするような旅物語でもある。横浜港から津軽海峡を抜けて極東シベリア・ナホトカまでの客船バイカル号の旅、ナホトカから列車でハバロフスクへ、そこからからモスクワまでのアエロフロート(ソ連民間航空機)で空路の旅、モスクワからフィンランドのヘルシンキまでの国際急行列車の旅、フィンランドの古都トゥルクからバルト海を越えてスウェーデンのストックホルムに至る船旅、ストックホルムからデンマークのコペンハーゲンまでのミニ・クーパーによる脱出行、コペンハーゲンからパリまでのジェット機の旅、パリからスペインのマドリッド、ポルトガルのリスボンまでのマイクロバスによる南ヨーロッパの旅、リスボンから貨物船によるニューヨークに向う大西洋横断の最後の旅路。この主人公ジュンの足跡を辿るだけでも、よだれが出るような見事なツアープランができあがってしまう。
 ジュンの放浪物語は、行く先々の豊かな旅情を織り込みながら、出会いとドラマがめまぐるしく展開する。新宿のジャズ・スポットでコンボの一員だった才能豊かな高校三年生のジュン。「お前さんのジャズには何かが欠けている」とマスターに指摘される。ジュンの彷徨が始まる。ジャズとは何か。音楽とは何か。人間とは何か。人生とは何か。ナホトカ航路やヨーロッパでの荒野の彷徨の中で何かを掴む。放浪の果てにアメリカでのジャズに挑むため大西洋を越えようとしているジュン。果てしない荒野をめざすジュンの航路を描きながら物語は終焉を迎える。 
 
 スパシーボ(ありがとう)、パジャールスタ(どうぞ)、オーチン・ハラショ(すばらしい)。作品の中に登場する言葉である。34年前にソ連を旅した時に頻繁に使用したツアー用語だった。マイルス・デイビス、コルトレーン、ビル・エバンス、ソニー・ロリンズ、ガレスピー。これも作中に触れられる私が好きだったモダンジャズのプレイヤーたちである。これらの言葉を目にするたびに読書を中断して思い出世界に浸ってしまう。これは、人生の多くの時間を過ごし多くの体験を経た果てのリタイヤ後の読書の愉しみのひとつかもしれない。老人は穏やかな追憶を辿る?

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_ じゅうのblog - 2016/03/11 20:42

「五木寛之」を代表する作品のひとつ『青年は荒野をめざす』を読みました。
[青年は荒野をめざす]

昔っから、読もう、読もうと思っていて、なかなか読めてなかった作品… ようやく読みました。

-----story-------------
青春の冒険を描き共感を呼んだ「五木寛之」の代表作
モスクワ、ヘルシンキ、パリ。
ジャズとセックス、薬。
20歳の「ジュン」の冒険を求めた青春の彷徨。
熱狂と頽廃の先にあるものは何か

ジャズ・ミュージシャンを目指す二十歳の「ジュン」は、ナホトカに向かう船に乗った。
モスクワ、ヘルシンキ、パリ、マドリッド…。
時代の重さに苛立ちながら、音楽とセックスに浸る若者たち。
彼らは自由と夢を荒野に求めて走り続ける。
60年代の若者の冒険を描き、圧倒的な共感を呼んだ、「五木寛之」の代表作。
解説「植草甚一」
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「五木寛之」が、実際にソ連と北欧を旅した際の経験が下敷きになっており、主人公の青年「ジュン」が、横浜〜ナホトカ(当時のソ連 極東シベリア)〜モスクワ(当時のソ連)〜ヘルシンキ(フィンランド)〜ストックホルム(スウェーデン)〜コペンハーゲン(デンマーク)〜パリ(フランス)〜マドリッド(スペイン)〜リスボン(ポルトガル)〜ニューヨーク(アメリカ)と旅する模様が描かれた作品です。

 ■第一章 霧のナホトカ航路
 ■第二章 モスクワの夜はふけて
 ■第三章 白夜のニンフたち
 ■第四章 地下クラブの青春
 ■第五章 人魚の街のブルース
 ■第六章 パリ・午前零時
 ■第七章 南ヨーロッパへの旅
 ■解説・植草甚一

「ジュン」に感情移入しつつ、次はどんな出来事が待っているんだろうかと、ワクワクしながら読みました。

様々な土地を巡るだけでなく、移動手段もフェリー、貨物船、国際急行列車、航空機、乗用車等々… 多様なところも、旅情をかきたてますね。

そして、自由と夢を求めて、もがきながらも前に進もうとする姿勢に共感… 愉しく読めましたね、、、

十代のときに、この作品に出合っていたら人生が変わっていたかもしれないなぁ… と思いました。

もう冒険できる年齢じゃないけど、、、

もう一度、青春時代をやり直せるなら、こんな人生を歩んでみたいな… と思わせる作品でしたね。


読んでいると、ジャズ聴きたくなりましたねぇ… 自分で演奏できるのが理想だけど、楽器を奏でることなんてできないもんね、、、

久々にジャズに浸りたくなったな。


「青年は荒野をめざす」… イイ言葉ですね。