藤沢周平著「用心棒日月抄・孤剣」2012年04月06日

 藤沢周平著「用心棒日月抄」の第二作「孤剣」を再読した。第一作を読んですぐにも第二作を読みたいと思った。第一作はそんな想いに駆られる作品だった。そのシリーズ二作目も快調である。
 著者の構想力や構成力の巧みさに舌を巻いた。第一作では主人公・青江又八郎の脱藩の原因となった事件の真相を又八郎自身が暴くことで藩への帰参を達成し、江戸での用心棒家業に決別する。ところが著者はあらたな事件を用意して再び又八郎に江戸に向かわせる。藩の密命故に脱藩の形をとらざるをえない又八郎はまたもや用心棒家業を続けながらミッションに取り組むことになる。こうした展開がいかにも自然で読者をして物語の世界に巧みに誘導する。
 登場人物にも魅力的な人物を投入される。口入れ屋・相模屋吉蔵、用心棒仲間の浪人・細谷源太夫といった個性豊かな常連に、あらたに痩浪人・米坂八内や女忍者・佐知を加え、一層ふくらみのある展開をみせる。それでいて第二作も用心棒家業での事件を扱いながら、きっちり又八郎自身の密命達成の落とし前をつけて無事藩に帰還するのである。
 このシリーズは全四作である。書棚を探したが第四作が見つからない。購入を見逃したのだ。ネットで早速検索すると98円の中古本がヒットした。送料込でも400円ほどの楽しみをすぐに発注した。