塩野七生著「ローマ人の物語15」2023年12月26日

 塩野七生著「ローマ人の物語15」を再読した。この巻は初代ローマ皇帝・アウグストゥスの43年に及ぶ統治の中期(45歳~57歳)の足跡を辿ったものだ。
 ブックカバー折り返しの”紹介文”にはこの巻の概要を次のように端的に記している。「『帝政』の名を口にせず、しかし着実に帝政をローマに浸透させていくアウグストゥス。彼の頭にあったのは、広大な版図に平和をもたらすためのリーダーシップの確立だった。(略)アグリッパ、マエケナスという腹心にも恵まれ、以後約200年もの間続く『パクス・ロマーナ』の枠組みが形作られていくのであった」
 順風満帆だったアウグストゥスの治世にもアグリッパの死が陰を落とす。ローマ帝国の防衛線をライン河からエルベ河・ドナウ河に移すというゲルマニア侵攻作戦に着手したアウグストゥスが直面したのはその軍事作戦の指揮官の選考だった。アグリッパ亡き後の右腕となったのは妻リヴィアの連れ子のティベリウスとドゥルーススの兄弟だった。ところが優れた指揮官だったドゥルーススが作戦中の不慮の事故で命を落とす。更に帝国の北の防衛線確立という困難な任務を担っていたティベリウスも血縁にこだわるアウグストゥスとの意見の相違から引退してしまう。
 以後、57歳となっていたアウグストゥスは広大なローマの統治をひとりで進めるしかなくなるという事態を迎える。