有馬川”橋物語”⑦松栄橋2024年05月18日

 万代橋の南500mほどの有馬川に架けられた橋が松栄橋である。有馬川に架かる昔からの架橋の中でも最も幅広く堅牢な橋梁である。山口の集落と金仙寺・船坂を結ぶ幹線道路を結ぶ有馬川の架橋である。
 「上山口区詩」には昭和35年の台風16号で、「昭和8年に竣工した鉄筋コンクリート造りで堅牢と思っていた松栄橋が、この洪水でもろくも流出した」という記述がある。また年表には翌年の「昭和36年8月に松栄橋架替工事完成」という記述があり、その素早い再建が地区にとっての松栄橋の重要性を窺わせている。
 松栄橋を巡る逸話には近くに立っていた銘木・夫婦松との関りが欠かせない。橋の東の緑道沿いに今も「夫婦松公園」がある。実際の夫婦松は公園からさらに東の今はフランス料理店のある地点辺りに立っていたと思われる。旧国鉄有馬線の軌道跡のすぐ東に立っていたことは残されている夫婦松公園の在りし日の画像で推測できる。
 夫婦松は樹齢400年以上の古木で「豊太閤が自ら植えた名木なり」と伝えられた松である。地上1m程のところから2本に分かれた幹(男松と女松と呼ばれた)が抱き合うように立ち「夫婦松」と呼ばれていた。ところが、1979年の強風で女松が倒れ、翌年には男松がマツクイ虫の被害を受け、惜しまれながら、1981年に伐採された。