塩野七生著「海の都の物語5」2025年07月13日

「海の都の物語5」を再読した。この巻は15世紀末のポルトガル船隊のインドへの新航路発見という大ニュースで幕を開ける「大航海時代の挑戦」と、トルコ帝国と君主制国家スペインとの狭間で対抗策を模索するヴェネツィア共和国の苦悩を描いた「二大帝国の谷間で」の2部構成である。
 新航路の発見は、胡椒に代表されるヴェネツィア共和国の地中海交易の花形商品の独占を脅かすものだった。これに対しヴェネツィアは地中海航路の見直し等の様々な巻き返しを図る。それがまた大航海時代の到来に対する対応を遅らせ共和国衰退の要因となる。
 その頃、地中海を取り巻く世界は都市国家から領土国家へと大きな転換の時代を迎えていた。有能な君主に恵まれた君主制国家は領土拡大をはかる。その代表的な国家がフェリペ二世に統治されたスペイン帝国だった。同じ頃、トルコ帝国もスレイマン大帝に率いられてイスラム世界のリーダーとして広大な領土を支配していた。
 地中海の覇権を巡ってイスラムの覇者トルコ帝国とキリスト教連合との海戦が二度に渡って火ぶたを切った。キリスト教連合艦隊はいずれもスペイン、ヴェネチィア、ローマ法王庁の各艦隊で構成された。1538年の第1次のプレヴェザの海戦は連合艦隊の連携不足からトルコ艦隊が勝利する。
 1571年、第2次のキリスト教連合艦隊の発足が構成国の思惑を超えて合意されトルコ艦隊との闘いに挑んだ。レパントの海戦と呼ばれるこの闘いは連合艦隊の圧倒的な勝利で終わる。