NHKスペシャル「1兆円を託された男 〜ニッポン半導体 復活のシナリオ〜」2025年09月16日

 NHKスペシャル「1兆円を託された男 〜ニッポン半導体 復活のシナリオ〜」を観た。見ごたえのある説得性に富んだ番組だった。
 番組紹介には次のようなコメントがあった。「7月、日本の新興メーカー・ラピダスが最先端半導体の試作に成功した。革新的なナノ構造で高性能を実現。AI社会の要になると期待されている。投入された税金は1兆円超。その量産化には日本の命運がかかる。プロジェクトを率いるのは社長・小池淳義。日立の社員だった頃、半導体工場の斬新なビジネスモデルを構想するも、挫折した経験を持つ。この1年、ニッポン半導体復活を賭け、量産ラインの構築に奔走した小池の姿を追った。」
 かつて日本は半導体大国として世界市場を席巻した。その記憶は鮮明である。その日本の半導体業界は今や見る影もなく衰退している。その衰退の中で復活を託された小池は、今後のAI時代に需要が高まるとみられる最先端の半導体を、他社に負けないスピードで大量生産するシナリオで日本の再生を目指す。小池の高い志と豊富な人脈が、志を同じくする国内外のエンジニアを結集し壮大な挑戦が始まっている。
 日本の半導体産業がなぜこれほどに衰退したのか。世界の時流となった開発と制作を分離しそれぞれに特化するというビジネスモデルを排除したことが最大の要因のようだ。そして今、日本の復活に向けて期待を集めている人物こそかつてそのビジネスモデルを提案し排除された小池氏その人である。時代の潮流を見据えた決断と行動力の重要性を痛感させられた。

NHK「新プロジェクトX”QRコード誕生”」2025年08月31日

 NHKの「新プロジェクトX~挑戦者たち~」は興味深くお気に入りの番組である。直近の”QRコード誕生”を観た。
 番組の紹介コメントは以下の通りである。
 コンビニ、空港、病院、あらゆる場所で使われている「QRコード」。今や生活に欠かせない情報のインフラだ。GPSや無線LANと並び称される新時代の発明は自動車部品メーカーの片隅で始まった。あるエンジニアが少年時代に抱いた夢と運命を動かした父親の言葉。そして、不器用ながらも熱い思いを抱く仲間たちとの出会い。無謀だと言われながらも、世界標準の夢に挑み続けた技術者たちの執念の物語である。
 個人的にもQRコードとの馴染は深い。特に社協HPをリニューアル公開して以降、HPのQRコードを積極的に活用してアクセスを促している。そのQRコードの誕生の経緯がドラマチックに描かれていた。今やこの発明は近年の日本人による発明としては国際的にも抜きんでたものである。その発明に関わった3人の人物像がそれぞれに個性的で面白い。日本人の物づくりの伝統的な風土が生み出した発明と言えなくもない。

NHK・BS「白人だけの町 オラニア」2025年06月28日

 NHK・BS世界のドキュメンタリー「白人だけの町 オラニア」 を観た。
 ”オラニア”は、南アフリカ共和国北ケープ州にある都市である。1994年にアパルトヘイトが廃止されたにもかかわらず、南アフリカ国内でオランダ系白人(アフリカーナー)のみで構成された街である。
 以下は、番組の紹介コメントである。
 『オラニアの人口は3000人。将来は南アからの独立を見据える。黒人として初めて1週間の滞在許可を得たアディは「安全な場所で暮らしたい」「自分たちの文化を守りたいだけ」と語る白人住民に違和感を覚える。人種差別の歴史から目を背けて理想郷を作っているのではないか…。分断と排斥の先には何があるのだろうか。』
 オラニアに白人のサポーターとともに単身乗り込んで取材を行ったアディは、黒人で車いす生活者である。オラニアの住民からは敵視されがちな町で果敢に取材を試みる。前半の比較的順調な取材があることをきっかけに暗転する。有力者のひとりとの取材中に”ブラック・ライヴズ・マター”を巡って感情的なやりとりをしてしまう。またたく間に町中に知れ渡り以後の取材が遮断される。それでも1週間の滞在中の最後に元首相の子孫である有力者と突っ込んだ取材で締めくくる。
 アディの勇気と挑戦に共感した。同時にこの地球上に人種隔離を公然と目指して実現している現実を初めて知って驚愕させられた。

フジテレビ「続・続・最後から二番目の恋」2025年06月26日

 毎週月曜9時からの楽しんでいたドラマ「続・続・最後から二番目の恋」が終わった。3回に渡って続いたシリーズのようだが、第3シリーズだけを観た。前2回のシリーズを観てなかったことが悔やまれた。
 それほどに面白いドラマだった。恋愛青春コメディとのことだが個人的には時代の空気を巧みに反映したトレンディドラマという印象が強い。主人公二人は還暦前後の年齢で高齢社会の鳥羽口にいる。交わされるお洒落な会話もリタイヤや老後が折り込まれている。
 最近視聴したドラマでは出色の出来栄えである。

NHKクローズアップ現代「産科医が足りない」2025年06月14日

NHKクローズアップ現代「産科医が足りない」を観た。以下はHPの番組紹介コメントである。
 「いま、住み慣れた町で安心してお産が出来ない、という事態が全国各地に広がりつつある。地域の総合病院が産科医不足を理由に、次々とお産の受け入れをやめているからだ。行き場を失った妊婦たちは、大きなおなかを抱え、隣町の病院に通わざるをえなくなっている。その背景には、昼夜を問わない過酷な勤務や、出産時の医療事故をめぐる訴訟が多いことなどを理由に、産科を辞める医師が多い上、新たななり手も少ないという構造的な問題がある。」
 このコメントとは別に番組中に指摘されていた「少子化による産科クリニックの経営赤字」が気になった。単純に産科医の収入は出産時の医療費収入が基盤であるが出産件数自体が少子化で年々減少している。これに反し支出は人件費や医療機器の設備投資等で固定化されている。その結果、産科医が足りないという以前に産科クリニック自体が少子化という構造的な要因で年々減少している。
 この問題の解決には分散化している産科クリニックの少子化に見合った集約化が避けられない。それは人口減少社会を迎えた日本の医療態勢にも共通する課題でもある。

ガイアの夜明け”海の幸のパズルを解け!”2025年06月03日

 テレビ東京の「ガイアの夜明け”海の幸のパズルを解け!”」を観た。「ガイアの夜明け」はお気に入り番組のひとつである。地球(ガイア)規模で経済事象を捉え新たな日本像を模索し、低迷する経済状況からの再生(夜明け)を目指すというコンセプトの番組のようだ。今回の”海の幸のパズルを解け!”という番組も「地球温暖化」がもたらす側面を独自の視点で切り込んだ意慾的な番組だった。
 番組紹介では次のように解説している。「地球温暖化が生態系に様々な変化を及ぼしている。日本でも海温が上昇し、日本各地で取れる魚に"異変"が生じている。それまで見たこともなかったような魚が水揚げされ、加工の仕方もわからず、未利用魚となってしまうことも少なくない。それらの海の幸を必要とする人々がいるのも事実だが、このマッチングは、複雑なパズルを解くように難しい。そんな中この難題に立ち向かうのが、東京・埼玉で産地と消費者を結ぶ体験型の鮮魚店”サカナバッカ”を10店舗運営する『フーディソン』だ。独自の戦略で、未利用魚を有効活用しようと奮闘するフーディソンの挑戦を追った。」
 番組では、雲仙市の名産・煮干しの原料のカタクチイワシが取れなくなった。北海道では値段がつきにくいオオズワイガニが大量発生。三陸の海では、「ヤガラ」という温暖な海を好む細長い魚が次々と網にかかる。そうした魚種の変化という異変を、フーディソンはビジネスチャンスとして捉える。これらを有効活用するべく、必要な地域へ輸送したり、美味しく食べられる調理法を考案したりと、解決策を次々と提示していく。
 地球温暖化という避けがたい事象を逆手に取った経済再生の手法に目を見張らされた。

本場のドイツで日本のグミのベストスリーは?2025年05月15日

 テレビを観ていたら、グミ発症の国ドイツで日本のどのグミが人気があるかというテーマの番組が目に入った。最終的に1位・ピュレグミ(レモン味)、2位・しゃりもにグミ(ヨーグルト味)、3位・コロロ(清水白桃味)がベストスリーで選ばれていた。これはもうぜひ味わってみたいと思い、テレビ画面をスマホに収めた。
 翌朝のウオーキングの途中でいつものようにセブンイレブンに立ち寄った。グミコーナーを探すと、レジカウンター前の正面のゴンドラエンドにいっぱい陳列されていた。一等地の売場陳列が人気アイテムであることを窺わせた。番組のベストスリーの内、ピュレグミ(レモン味)としゃりもにグミ(ヨーグルト味)が見つかり購入した。
 自宅に戻り、家内にも紹介して二人で二種類のグミを味わった。二人ともしゃりもにグミ(ヨーグルト味)に軍配をあげた。何とも言えない初めて味わう柔らかい不思議な食感とヨーグルトのほどよい甘酸っぱさに魅せられた。

関西TV「引き裂かれる家族~検証・揺さぶられっ子症候群~」2025年05月08日

 関西テレビの再放送番組「引き裂かれる家族~検証・揺さぶられっ子症候群~」を観た。児童虐待を巡る考えさせられるドキュメンタリー番組だった。
2017年、夫婦と子供二人の平穏な家族に襲った理不尽な現実が生々しく伝えられる。父親が生後2か月の長男をあやしていた時、突然長男の容態が急変する。救急搬送された病院で硬膜下出血や眼底出血が見つかる。長男は退院予定日に児童相談所に一時保護される。父親による激しく揺さぶって発症する「揺さぶられっ子症候群(SBS)」が疑われ、1年後には逮捕起訴される。家族は長男と4年以上の引き裂かれた生活を強いられる。相次ぐSBS事件を受けて弁護士たちによる「SBS検証プロジェクト」が立ち上げられ、「揺さぶり」を否定する無罪判決が続出する。その過程で「虐待ありき」の厚労省のガイドライン、児童相談所の過剰で理不尽な対応、日本の「人質司法」を思わせる刑事司法の問題等が明らかとなる。
 児童虐待に対する声高な世論を背景に厚労省や児童相談所等の行政の過剰な関与が取りざたされている。児童虐待一辺倒の対応でない保護者のまっとうな意向を受止めるバランスが必要だ。
 民生・児童委員だった数年前に、「不当に子どもを児童相談所に連れ去られた」という母親の訴えを受けたことがある。その時初めて児童虐待の一方で児童相談所の過剰な関与を感じさせられた。
 番組では2023年に最終的に父親の無罪判決が確定し、一方的な「虐待ありき」の厚労省ガイドラインも削除されたというコメントで終了した。

NHKスペシャル新ジャポニズム 第4集 DESIGN2025年04月08日

 シリーズ「新ジャポニズム」の第4集は「DESIGNデザイン」である。以下番組コメントの紹介である。

 世界が注目する日本カルチャーのうねりを読み解くシリーズ。今回は、ファッション、テクノロジー、建築など多くの分野で賞賛される日本のデザイン。アメリカの大人が買い求めるのはランドセル。美しさと機能性が人気だ。欧米では、壊れた器を漆や金で直す「金継ぎ」教室が大盛況。癒やしと勇気を与えられるという。日本各地で職人技を探す有名ブランドの調査にも密着。職人の手仕事、その技を伝え守る日本人の暮らしと思想に迫る。

 紹介されるのは「日本製品の独自性、オリジナリティ、卓越性、品質や細部へのこだわり」である。その背景には「職人や物語へのこだわり、そのすべてを提供してくれる独特な場所」がある。
 そして京丹後の螺鈿織、岡山県井原のデニム生地、日本の折り紙を応用したNASAの探査機のデザイン、大分県日田市の恩多焼き等々の日本の伝統的な職人の手仕事の数々が紹介される。
 見応えのあるドキュメンタリー番組だった。

NHK「メディアが私たちをつくってきた!?」2025年03月26日

 NHK「メディアが私たちをつくってきた!?」という番組を観た。NHK放送100年記念の特集番組である。
 ラジオ放送開始100年のメディアの変遷を辿りながら「メディアの進化と私たちの意識の変化を丁寧にたどり、未来へのヒントを探る番組」だった。
 ラジオ以前のメディアは新聞等の文字媒体だった。それがラジオという音声媒体が登場し圧倒的な情報伝達力で聴衆を魅了した。その音声媒体も、「音声+映像」媒体というテレビのに取って代わられる。テレビは水俣病報道等の公共放送の使命やワイドショーの感情に訴える番組で進化を遂げる。
 そして今やテレビの情報伝達媒体はインターネットの普及でSNSという双方向のメディアによって”オールド・メディア”の地位に転落しようとしている。
 メディアの変遷のもたらす効果と影をわかりやすく解説した佳作だった。