アンチ・ヒーローの気概2009年08月30日

 朝の散歩を終えてそのまま投票会場の小学校に向った。校門前の道路をマイカーが列をつくっている。校門内の投票会場付近に駐車していたワンボックスカーから車椅子のお年寄りが介助されながら降り立った。投票を終えて会場を出ると、待ち構えていた二人の若い女性に声を掛けられる。初めて経験する出口調査だった。今朝の朝刊は28日現在の期日前投票数を1094万人と伝えている。投票二日前で有権者の実に10%以上が投票済である。伝わってくる情報のことごとくが4年ぶりの総選挙の関心の高さを物語っている。 
 民主党による政権交代は必至の情勢である。1993年の総選挙による細川政権誕生以来の16年ぶりの政権交代である。非自民8党・会派連立のこの細川政権は、基盤の脆弱さという決定的な要因を抱えてわずか8ヶ月であっけなく瓦解した。単独過半数以上の議席確保が予想される民主党政権の基盤は、細川政権に比べはるかに強固なものになるだろう。参院での与野党拮抗を背景に、連立政権の枠組みづくりの準備も16年前の比ではない。
 むしろ懸念されるのは民主党ひとり勝ちの圧勝という事態である。前回総選挙での自民圧勝の裏返しが予想される。小泉チルドレンに替わって小沢チルドレンが多数の議席を占めることの懸念は拭えない。固有名詞を冠したチルドレンたちの現出は、ひとりのヒーローによる国政の壟断につながりはしないか。現在の小選挙区比例代表制という選挙制度が政権交代を可能にする二大政党制を生み出したことは否定できない。それは国民に政権選択という進化した民主制を実現する貴重な選択肢をもたらした。同時にそれは卓越した政治手法を持った人物による強大な政治勢力を生み出すことを可能にする仕組みであることも思い知らされた。この仕組みを導入した中心人物でもある小沢一郎が傑出した政治手腕を持つ稀代の政治家であることは認めざるをえない。今回の総選挙に向けた選挙対策責任者としての民主党躍進の貢献も大である。その人物が民主党代表時代に、福田首相との間で自民党との大連立を仕掛け合意したことは記憶に新しい。小沢手法の強引さと不気味さに危険な匂いを感じたものだ。
 小選挙区比例代表制の下での国民の「アンチ・ヒーローの気概」こそが求められている。