NHK BSプレミアム「英雄たちの選択 迷えるカリスマ・足利尊氏」2015年06月30日

 NHK BSプレミアム英雄たちの選択 シリーズ“政権誕生の地”「迷えるカリスマ・足利尊氏」を観た。「英雄たちの選択シリーズ」は「その時歴史が動いた」「BS歴史館」「歴史ヒストリア」などのNHKの日本歴史情報番組のひとつでよく観る番組のひとつだ。
 この番組は、足利尊氏の新政権の拠点を「京都に置くか鎌倉に置くか」という選択がテーマである。歴史的には尊氏は京都を選択したわけだが番組では、尊氏には「鎌倉」というもうひとつの重大な選択肢があったことを明らかにし、そのことを通じて尊氏の京都選択が日本史上にもたらした二つの重大な史実を浮かび上がらせる。
 ひとつは、それまでの関東拠点の武家支配が全国の統治者に飛躍する大きな一歩を築いた点である。史上初めて武家政権を樹立した頼朝は、平安京以来の京都を都とした公家社会のくびきを脱する上で、京都を離れ鎌倉に拠点を置かざるを得なかった。その結果、鎌倉幕府の関東に偏在した権力構造という性格を免れなかった。尊氏は、後醍醐天皇の命を受けた新田義貞軍を箱根で打ち破った時、拠点の鎌倉に戻り新政権を樹立するか、京都に進軍し新たな武家政権を樹立するかの選択を迫られた。京都での史上初めての武家政権樹立という選択が西日本も含めた全国統治の礎を築いた。
 今ひとつは、公家文化と武家文化が融合した室町文化という日本文化の礎を築いた点である。京都を脱して鎌倉を拠点とした鎌倉幕府は約150年間の統治を通して質実剛健を旨とした武家文化を花咲かせた。尊氏の室町幕府はその武家文化と京都を拠点とした雅な公家文化との融合を果たし、能、生け花、茶の湯といった今日に続く日本文化の礎を築いた。