塩野七生著「ローマ人の物語18」2024年03月07日

 塩野七生著「ローマ人の物語18」を再読した。この巻は二代ローマ皇帝・ティベリウスの晩年と三代皇帝カリグラの治世の物語である。
 前18巻からの4巻は「悪名高き皇帝たち」というサブタイトルでティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロと続く4代の皇帝を扱っている。
 前巻では2代皇帝ティベリウスのカエサル、アウグストゥスに続くローマ帝国の偉大な継承者としての姿が描かれた。続く本巻ではティベリウスの晩年の”カリブ隠遁”から物語が始まる。カリブ隠遁後もローマ帝国統治を続けたテベリウスだが、晩年の統治には後世の批判を受ける暗い影の部分も見え隠れした。
 77歳という高齢で天寿を全うしたティベリウスの後を継いだのは、神君アウグストゥスの血を引く24歳の若きカリグラだった。しかしカリグラは4年足らずの治世で数々の過ちを犯す。人々の帝政に対する不信感。迎合主義と個人的浪費による国家財政の破綻。モウリタニア王国、ユダヤ問題、ブリタニア問題等の外政の失策。こうした失政の果てにカリグラは28歳で近衛軍団大隊長ケレアを中心とした20人前後の兵士たちによって殺害される。
 巻末のカリグラ暗殺の顛末には驚嘆させられる。カリグラの治世が国家破綻を招きかねない事態になっても元老院は無力だった。誰もが手をこまねくしかない状況で大隊長ケレアが暗殺を決行し独自の判断で皇位継承の段取りをつけてしまう。その決断力と手際の良さは元老院をして否応なくその手順を追認させるものだった。その果てに自らが皇位につけた第4代皇帝クラウディウスの命によりケレアは従容として処刑に服した。見事という他はない。