逆縁の訪れ(4)通夜式と故人の交遊の友人情報2024年03月16日

 午後6時に長男の「通夜式」が始まった。大久保大和会館3階の親族控室に隣接するホールが式場だった。 関係先への「家族葬」の連絡にもかかわらず職場関係等から供えられたたくさんの供花が祭壇の左右に飾られた。参会者も故人が現役世代ということもあり親族以外に友人や職場関係者の姿も多かった。
 会館のお世話で神戸市須磨区の浄土真宗寺院の若い住職に導師を務めて頂いた。式場に導師が入場し読経が始まった。盆正月に我が家で故人も含めて家族揃って誦した馴染みのお経である。
 通夜式を終えて式場隣りの部屋で近親者による”通夜ぶるまい”が始まった。喪主の意向もあり故人の友人お二人とその奥さんにもお付き合い頂いた。友人席隣りでの会食が長男を偲ぶ多くの情報をもたらした。
 長男は中学、高校を三田市内の私立の伝統校に学んだ。硬式テニスのクラブ活動でかけがえのない4人の友人を得た。4人グループは大学、社会人になってもずっと続き、結婚後も家族ぐるみの交わりとして続いていたようだ。長男の奥さんからの訃報を受けた地元の友人を介して東京、長野在住の他の二人の友人にも式場に駆けつけてもらった。
 通夜ぶるまいの歓談で両親の知らない長男の一面を知った。「4人の仲間のまとめ役だった」「決断力がありいつも前向きに挑戦していた」「明るくて世話好きで皆に信頼されていた」「営業センスもあり順調に業績を上げていた」「反面、上司との葛藤に悩んでいた時期もあった」等々。両親には多くを語らない息子だった。とりわけ仕事上の悩みは聞いた記憶がない。それだけに親友たちが語る長男の人となりは新鮮で慰められるものだった。
 中学以来の40年近くの密度の濃い交わりは稀有である。長男の貴重な交遊の仲間たちにあらためて感謝した。それは故人の人生にかけがえのない色どりを添えたことだろう。
 歓談の途中で故人の奥さんに呼ばれ、控室祭壇横で若い男性に引き合わされた。知らせを聞いてはるばる東京から駆け付けた職場の後輩だった。故人への感謝の言葉を聞きながら目頭が熱くなった。別れを告げるためだけに東京から駆け付けてもらったことの意味は重い。それだけ故人が慕われていたとことの証しと思えた。
 ”通夜ぶるまい”のひと時は両親に故人の生前の人となりを伝え、多くの慰めと癒しをもたらす機会でもあった。