鳩の弔い2009年05月22日

 夕方、外出から帰ってきた家内が、「お父さんッ!チョッと来て」とうわずった声で呼んだ。事件発生のようだ。大相撲のTV観戦を一時断念して玄関に出た。玄関ドアの前で血を流して横たわっている鳩がいた。既に遺体となっているようでピクリとも動かない。周囲の飛び散った血痕は黒ずみ始めている。他の生き物と争った跡は発見できない。
 鑑識の見立てでは、ポーチの段差に激突したものと推定された。わずか20cmほどの段差に何故ぶつかったのかは謎である。現場は玄関ポーチのど真中である。放置できないことは言うまでもない。こうした事態の一般的な事例を見聞きした風な家内が提案する。最寄りの住宅街斜面に埋めてやると言うことだった。私に代替案があるわけではない。提案に沿ってスコップで遺体を紙袋に入れて、埋葬地に向う。
 ガードレールを乗り越えて斜面下の踊り場風の平地に降りる。樹木の根が張った地面にてこずりながら深さ20cmばかりの小穴を掘った。遺体を入れて枯葉の混ざった土を被せる。手を合わせ念仏を唱えて弔いを終えた。
 穏やかなリタイヤ生活の日常に突然飛び込んだ穏やかならざる事件だった。