公民館講座「山口のホタルの生態」2009年05月30日

 午後2時から地区センターで「山口のホタルの生態」についての公民館講座があった。講師は山口地区の民生・児童委員仲間で山口・船坂校区の青愛協会長の本田さんである。13年間にわたってシーズン中の約3ヶ月間、毎晩ホタルの生態を調査してきたということだ。新明治橋から中野の高架橋下までの約6kmが守備範囲だという。父親の通夜の席から喪主の身ながら観察に出かけたという。ホタルおじさんの情熱はハンパじゃない。
 「一本の草に多数のホタルが群がり草全体が光っていた」「草叢と空中を100匹以上のホタルが群舞して輝いていた」「小川の両岸を光りの流れができていた」。永年の観察がもたらした数々の感動風景が語られる。この感動こそが永年にわたる観察と保護の取組みの原点なのだろう。
 6月頃にメスの光を求めて小さなオスが飛び交い交尾する。産卵、孵化を経て幼虫になり水中生活が始まる。貝の一種のカワニナを食べながら10ヶ月間に6回の脱皮を繰り返して成長する。翌年四月に上陸し、さなぎとなって地中で1ヶ月を過ごす。6月に羽化し成虫となってメスの光を求めて飛び交う。ホタルの一生である。このホタルの成長物語の中に生息のための環境条件がこめられている。
 オスがメスの光を見つけて交尾するには暗くないと駄目だ。住宅開発や商業施設のオープンで川面を照らす人工の光の拡大が生息エリアを縮小させている。産卵には川辺の草叢が必要だ。水中生活では餌となるカワニナが十分生息していることが条件となる。カワニナの天敵の蛭は多少塩分を含んだ有馬川の水質を苦手としている。成長した幼虫が上陸し地中生活がおくるために中洲があることも条件だ。西川の三面コンクリート工事はホタルを絶滅させた。飛び交う成虫の休息地となる岸辺の草木も大切だ。こうした条件を備えた有馬川や船坂川の環境が貴重なホタルの生息を可能にしている。
 「ホタルは成虫になって、三日から一週間の命しかない。成虫になってからは水以外に何も食べず、幼虫時代に蓄えた養分だけで生きている」と語る本田さんの言葉に、はかない命への限りない愛情がこめられている。
 本田さんたちのグループによる保護のための環境整備の取組みが続いている。11月には有馬川クリーン作戦を実施する。子供たちに学校で「ホタルを守ろう」のポスターを描いてもらう。市の業者による川中の草刈り時期を8月以降にずらしてもらった。高速道設置に際しては川面を照らす街灯の光を抑制する仕様に変えてもらった。
 ホタルの鑑賞ポイントのとっておき情報も語られる。6月第1週がピーク。地中から出やすい雨上がりの夜が狙い目。17度位の蒸し暑い日が良い。時間帯は8時から9時半頃がピーク。こんな条件に近い日を選んで年1回の青愛協主催の「ホタルウォークラリー」が開催される。今年は来週の6月6日の土曜だ。口コミもあって他の市町村からの参加者も多。年によっては1500人もの参加がある。山口中央公園から中野の高架橋下までの約2kmのホタル鑑賞ウォークだ。
 予定時間を10分以上オーバーしての熱のこもった講演が終了した。ホタル鑑賞の貴重な情報を得た。それ以上にホタルが生息できる山口の風土と環境をありがたいと思った。その環境を守り続けてきた人たちの取組みに感謝した。来週のウォークラリーだけでなく、できる範囲の保護の取組みに参加しよう。新興住宅街在住者にとっても終の棲家となったこの街のかけがえのない資産だ。地域の環境を守る上での格好のテーマと言える。